大前研一さんの原子炉問題に関する動画がすばらしい
今回の地震による原子炉の問題を、大前研一さんが分かりやすく解説してくださっています。
私は学生時代から今に至るまで音楽ばかりやっていましたので、このジャンルは不勉強だったのですが、そんな私でも理解できました。
日々報道を見て、ただ不安なばかりだったところ、これで少し安心できましたし、日本の原子力の将来についても自分なりに考えるようになりました。
ただ1時間の動画なので、全てを見るのも大変だと思います。私が見て勉強になったポイントを簡単にご紹介したいと思います。
★問題は全ての電源が切れてしまったこと★
元々、原子炉は二重三重の対策が施されているそうです。しかし津波や、おそらく変電所との間の断線等の様々な要因が重なって、電源が全くない状態になってしまいました。
これにより、様々な対策が上手く動かなくなってしまいました。
例えば、原子炉はECCS(緊急炉心冷却装置)により、緊急時には、何千トンもの水が一気に入ってくるようになっていましたが、これが入ってきませんでした。中は高温・高圧になっているために注入するには特殊な加圧ポンプが必要でしたが、現場にはありませんでした。
緊急時、炉心の上にあるボロン等の材料で核反応を止める仕組みになっていましたが、電気がないので、これらも注入できませんでした。
このように、考えられる二重三重の対策全てが電気を前提にしたため、これらがうまく動きませんでした。
★爆発の原因となった水素を有効的に逃せなかった★
空焚き状態になると、ジルコニウムで出来ている被覆冠が高温の水蒸気と反応して水素が出るそうです。(最新型はステンレス製になっているのでこのようなことはないそうです)
水素が上へたまり、圧力で格納容器から建屋に出たのですが、通常だと建屋に水素がたまると酸化させて水にする装置がついているそうです。しかしこれも電気がないので作動しませんでした。
建屋は負圧になっていて、マイナスの圧力で表に出ない仕組みになっています。また、圧力が高くなってくると表に開く「ブローウィンド」が開き、水素を外に出す仕組みになっています。しかしこれも電気がないので作動しませんでした。
水素は酸素と結びつくと、爆発します。
そのため、発生した水素をはやく逃してあげなければなりません。
現場では、格納容器の外にたまっている水蒸気を逃すため、10分と働けない高い放射線レベルの場所にあるバルブを、決死隊により手動で開けました。
一方で水素は上にもたまっていました。「ブローウィンド」をあけることができない状態で、これも決死隊が出て、水素を出していればよかったのですが、躊躇してしまいました。
実際には作業する方々は文字通りご自分の命を晒して作業をされています。本当に感謝の言葉しかありません。
★飛び散った放射能★
核分裂生成物が、水素の爆発により広範囲に散ってしまいました。しかしもし衣服に付着した場合は、多くの場合はすぐに洗えばよいそうです。
実際、大前氏はMIT時代、放射性物質を飲み込んでしまったそうです。半減期50年のものだったそうで、まだ放射能レベルは半分になっていませんが大前氏は現在元気な様子です。
確かに放射能は怖いものですし、中には猛毒性を持つ放射能物質もあるようですが、全ての放射能に過剰に怖がる必要はないと分かり、少し安心しました。
大前氏は反省点として、以下のポイントを挙げています。
・どんなことがあっても非常用の電源が動くようにすること。
・バックアップのためディーゼルだけでなく2系統にする。例えば、太陽電池など。
・同じところに複数の原子炉を建設しないこと。複数の原子炉があると、今回のように、同じ条件で同じように異常が発生してしまいます
★日本の原子炉の今後は?★
今後原子炉をやり続けるのであれば、民間に対して、国家、経済産業省、原子力委員会、保安委員会が関わっている、というイビツな形でなくて、国が公営事業化して、国が自分の責任でやり、東電などに「売電」するという仕組みがよいと提案していました。
・・・・というように、今後の原子力事業にまで及んだ詳しい話が展開されていました。
私たちは、原子力発電の恩恵をこうむって豊かな生活ができたのですが、地震大国と言われる日本は、それと引き換えに大きなリスクも含んでいた、ということですね。
今回の事故では福島県の被害は甚大です。地元の方々のご心労やご苦労は、私たちが想像する以上のものでしょう。
しかし今のところ、今回の事故で首都圏に対する被害はほとんどない、ということも分かりました。