今世界で一番有名な日本人クラッシックアーティスト グラミー賞受賞内田光子さん
日本人ピアニストの内田光子さんが、2月13日、第53回グラミー賞、最優秀インストゥルメンタル・ソリスト演奏賞を受賞しました。
私が内田さんの演奏を初めて聴いたのは、モーツァルトのピアノ協奏曲。
「弾き振り」というスタイルで、オーケストラを指揮をしながらのピアノ演奏です。
彼女のピアノ同様、思い入れたっぷりの指揮でした。
内田さんのモーツァルト演奏でずば抜けて素晴らしいのは、k.466とk.491の2曲の作品だと思います。
全部で27曲あるモーツァルトのピアノ協奏曲の中でたった2曲だけの短調(暗い調)作品です。
k.466は、まさに「涙を浮かべながら疾走するモーツァルト」さながらであり、憂いをおびたニュアンス、胸を締め付けられるような長調(明るい調)への転調・・・。聴いていてひたすら悲しくなってしまいます。
もちろん、彼女の弾く明るい曲想の長調作品も素晴らしいのですが、遊びであったり、愉悦であったりする部分に対して、暗さへの表現が優先されてしまい、個人的に心から楽しむというのとは違うのです。
孤独に内面を見つめるような音楽性が内田さんの特徴なのだと思います。
内田さんは、12歳から、大使であるお父さんの関係でウィーンで生活し、今はイギリス在住。
子供の頃から読書が好きで、ピアノと共に自分の内面世界を構築してきたのでしょう。
今でもドイツ語で本を読むほうが、心に素直に入ってくるのだそうです。
この語学感覚が、内田さんの音楽語法に結びついているような気がしています。
内田さんの若い頃の映像を見ると音楽性も容姿も今とはかなり違っています。
数々のコンクール受賞にも関わらず、不遇な時代が長かった内田さん。大使でもあるお父さんの内田藤雄氏は、内田さん22歳以降、外国で苦労する彼女に一切の援助を絶ったそうです。
今は、ピアノも、生き方も、ファッションも、突き抜けてしまっていて、全てが「内田光子」という存在となっています。
「時間がもったいない」と口紅一本もってなく、長髪をかきあげ、ボリボリと頭をかきながら話すしぐさも、なんだか個性的でかっこよく見えてしまいます。
いつかのインタビューで「演奏会の後のビールが美味しいからやめられない」
と言っていた内田さん。
内田さんは、どちらかというと日本より外国での人気が高く、日本人クラッシックアーティストでは今一番有名なのではないかと思います。
この受賞をきっかけに、さらに日本での知名度もあがることでしょう。
これからも、素晴らしい演奏で私たちに感動を与えていただきたいですね。