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衝撃的で魔力を持つ その去勢された男性たちの声

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ヨーロッパの貴族は、女性の高い美声は大変魅力的であることに気がつき官能の喜びを味わいました。そのため以前は女性オペラ歌手は宮廷の寵姫となっていたのです。
 
しかし、17~18世紀には、200年もの間、カストラートと呼ばれる去勢男性歌手が絶大な人気を誇っていました。
 
貧しい出身が多いのが特徴。幼い頃に去勢して変声期をなくし、子供と女性の中間的な声を人工的に作り出すのです。
 
2011年1月20日の日経「入門講座」にカストラートの記事がありましたのでご紹介します。
 
「神のような声」を持つと賞されたカストラートのファリネッリは、その歌によって極度のうつ病であったスペイン、フェリペ5世の心を癒し、回復させました。

     ・・・・・(以下引用)・・・・・
 
ついには側近として抜擢され絶大な権力を手に入れる。うつ病の王のために毎夜歌い続けるだけではなく、宰相として外交もこなし、内政面では土木工事に力を入れるなど、善政をほどこした。
(中略)
カストラートは多くの権力者の心をつかんできた。フランス国王ルイ13世の妃アンヌは18歳の美しいカストラート、アット・メラーニに大変なほれこみようだったし、ナポレオンもウィーンで聴いたジローラモ・クレシェンティーニというカストラートに恍惚としてしまい、皇帝一族の音楽教師としてパリに招いている。
いまや時代も変わり、カストラートはいなくなった。
 
     ・・・・・(以上引用)・・・・・

記事によるとその声とは「ヌルりとした衝撃的な声。薄気味悪いほどに濃厚な情感をたたえている」のだそうです。
アルバム「ALTUS 奇跡の声-美しきカウンターテナーの世界」には、1922年に亡くなった最後のカストラートといわれるアレッサンドロ・モレスキが、1902年にバチカンのシスティーナ礼拝堂で録音した貴重な演奏が収録されています。
 
現代では、男声のカウンターテナーとよばれる声種がカストラートの声を追求しています。
 
国の政治を動かすほどの魅力、というより魔力と表現したほうがふさわしいかもしれません。
そんな声があるならば一度生で本物を聴いてみたい・・・と、ふと思ってしまう自分がいて動揺してしまいました。
 
人間の美への欲望はなんと貪欲で残忍なのでしょうか。
 
カストラートの話しを思い出すたびに、人間の心の奥底にある深いエゴを感じてしまうのです。

*2011/01/25訂正:虚勢→去勢

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