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あがらないで実力を発揮するための処方箋とは?

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演奏会の出番を待っているときの緊張感とは独特のものがあります。
 
先日、何名かのピアニストとコンサートをしたのですが、楽屋の様子も人それぞれ。
 
座っていられないほどソワソワと落ち着かない人。楽譜を置き、ギリギリまでテーブルの上で指を動かしている人。のどが渇くと言ってお茶ばかり飲んでいる人。ハイになってしまいしゃべりまくっている人・・・。
 
そして各自出番になると、覚悟したような表情で一人また一人と楽屋を出ていくのです
 
楽譜を奏でるのは、ピアニスト一人。演奏は全て暗譜で一つも間違えられません。孤独な上、すべてを完璧にしなければいけないという重圧からでしょうか。何か処刑でもされるような雰囲気が漂います
 
音楽という孤独でデリケートなものを取り扱う繊細な感性と、また逆に、舞台の上では大胆に表現するちょっと無神経なところ両方が必要なところが、演奏の難しいところです。
 
人間は緊張するとどうなるか。
 
「心臓がどきどきしてくる」「きょろきょろと落ち着かなくなる」などの症状が出ます。
これは敵や獣に襲われる危険を察知し、最速で適切な方向に逃げるため、脳がどの方向に動くか判断が始まります。そのため大量の血液を必要としているのです。
さらに、逃げられないと分かったとき、闘わなくてはなりません。ダメージを最小限に抑えるため、頭や心臓などを守り、出血を最小限にするため血管を収縮させるのです。
そのため「手足が冷たくなる」「顔面が蒼白になり身体が硬直する」という状態になります。
狩に出ることが多かった男性は、背後から襲われる可能性が高かったことから、身を守るために女性よりも背中の肉が厚くなっているのもその時代の名残とも言われています。
 
そして人間は、もし避難が遅れ、死を免れないような状況になったとき、モルヒネのような快楽物質が出て、苦しみを和らげるというシステムが作動します。
 
死ぬ直前、楽園で神様が手招きしている姿を見たり、マラソンランナーがランナーズハイになったりするのもその一つの例ですね。
 
この、人間の本能的な反応はどうしようもないことで、何度舞台を踏んでも常につきまといます。
 
一流の演奏家なればなるほど期待も高くなりプレッシャーもきつくなってきます。
一見、余裕で演奏しているように見えますが、舞台裏では大変な葛藤があるのですよね。
ある有名な演奏家が「緊張しないための方法はありますか?」という質問をされて「そんな方法があるなら私が教えてもらいたいですね」と回答していました。
 
もしかしたら確実な処方箋はないのかもしれません。
 
一つ方法があるとしたらば、本当にまずいことがおこった場合のアドリブがきかせられる可能性を考えておくと精神的に追い詰めないですみます。こうするだけでかなり気持ちが楽になり、実際その方法をとらないでも済むことも多いのです。
譜面の通り演奏しなくてはならないピアニストはかなり厳しいと思いますが、そんな状況でも、少し遊びの部分を見つけておくことと、できるだけ数多く人前でのリハーサルを重ねることで、メンタルも含めて様々な状況での対処方法を身につけておくこと。これで少しずつ実力を発揮できるようになっていくのだと思っています。
 

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