仕事は条件が厳しいほうがやりやすい
昨日、建築家の竹山実さんの記事を書きました。
竹山さんは、渋谷の109や、歌舞伎町の二番館、晴海客船ターミナルなどを作った方です。
竹山さんは「条件が厳しいほうがやりやすい場合がある」と言います。
例えば、予算が少ないとか、非常に不思議な敷地だとか、普通だとやりにくいと思われるような条件のほうが良い仕事ができるというのです。
建築というのは外からの制約が大きく、必ずしも自分が表現したい通りには物事は運ばないことが多い。
「だから、その制約をいかに自分の向くままにあしらっていくか、意味あるものに使うかというのが建築なのです。」と言っています。
つい先日、作曲家に曲を依頼したのですが、その方も興味深いことを言っていました。
「"全部お任せします"っていうのはやりにくいんですよね。」
「例えば歌の曲だったら、詩が大事なんですよ。いい詩があったらそれに音をつけていくのが作曲家の仕事です。詩を持ってきてくださったほうがやりやすい。」
私は、詩もひっくるめて全てイメージの中にあったほうがつくりやすいのかと思っていたのですが、そうではなく、ある程度の制約があったほうが創造性が働くというのです。
今回の依頼は、テキストと演奏時間と音の構成、本番までの練習時間が決まっていて、かつ内容は「ありきたりにしないで」というもの。
しかし、とても迅速に良い作品を作ってくださいました。
やはり制約があったほうがやりやすいようです。
建築は「凍れる音楽」と言われているほど、音楽になぞらえることが多いですね。
「空間のオーケストレーション」とか「シンコペーション(リズムの種類)」など音楽用語をよく使うそうです。
特に、建築家と作曲家はとても似ている存在のような気がします。
また、演奏という行為も、楽譜や様式という制約があり、その中で自分を表現していかなくてはならないところがあります。
制約があったほうが「やりがいがある」のではなくて「やりやすい」。
彼らの言葉に創造の本質をみる思いでした。