「仕事は盗んで覚えろ」よりどんどん教えてどんどんオープンに
料理人で京都吉兆社長の徳岡邦夫さん。
以前、NHK「プロフェッショナルの流儀」にてレポーターが徳岡さんの炊いたシンプルな白いご飯を食べて感激で涙を流していたのが印象に残っています。
2010年12月6日~10日日経の「人間発見」に連載がありました。
徳岡さんは、若い料理人にも秘伝のレシピを公開。「料理は盗んで覚えろ」という料理界の常識を打ち破ります。
・・・・・(以下引用)・・・・・
料理人の世界では「料理は盗んで覚えろ」という格言があり、若い人に料理を教えずに雑用をやらせる。私の経験から言うと先輩の料理人が若手に地位を脅かされるのが怖いから、そんな格言を流布させているんです。料理は経験が大切。レシピを見せて包丁をもたせる。それが成長の極意になる。
・・・・・(以上引用)・・・・・
大きな料理店になると、常に先輩後輩が一緒に仕事をして下克上が激しく、確かに「脅かされる」感覚はあるかもしれませんね。
しかし、わざと教えないでいるということは、後進が育ちにくいということにもなり、その業界全体の弱体化につながります。
そうすると最終的には自分にはね返ってくることになるのです。
ただ、「教えない」という意味は、いろいろな考えがあると思います。
例えば、全て教えすぎると自分の頭で考えてインスピレーションを働かせる力がついていかない可能性があるので、あえて言わない、教えない、ということもあります。
音楽の世界でも、「教えない」「見て覚えなさい」とよく言われます。
教えずぎると教えに頼ってしまい、何も勉強してこないで受身だけになってしまうこともあるのは確かです。大人になっても師匠の音楽に呪縛されてしまい、なかなか殻の破れない人はたくさんいます。
教えすぎの危険性は分かった上で、私は知識や智恵、経験、技術などはできるだけオープンに、出し惜しみしないようにする方が良いと思っています。
「教えない文化」になっているところ、悪い意味での格言や古い常識にとらわれるすぎている業界ほど衰退していきやすいのではないでしょうか。