銀行員のお父さんが「ピアノの調律が必要だ」
「メリー・ポピンズ」をご存知でしょうか。
子供の頃何度も読み直した愛読書です。
傘をさしながら空を飛ぶポピンズに憧れて、高い塀から飛び降りたことがあります。
夢見がちな子供だったせいか、傘で自由に飛んでみたい、いや飛ぶことができるはずだ、と信じてしまったのですね。
飛行計画は当然失敗に終わり、その時の傷跡がうっすら膝に残っています。
ウォルト・ディズニー・カンパニー製作のミュージカル映画「メリー・ポピンズ」をDVDで見ました。
バンクス家のお父さんジョージの友人、ブーム海軍大将は、毎日朝と夕方決まった時間になると、時報代わりに大砲を撃ちます。
その振動でバンクス家はぐらぐらと揺れて、食器棚やテーブルが移動してしまうほどなのです。
家族は「そろそろ大砲の時間だ」と家具を押さえるのが日課。
そのディズニー映画の中で、ある朝、お父さんのジョージが優雅に紅茶を飲んでいるところ、大砲が放たれました。
その振動でピアノがドーンとお父さんの目の前に移動してきます。
お父さんは、落ち着き払ってピアノのキーを「ポンポン」と叩きます。
「調律が必要だな」
と一言。
まじめな銀行員のお父さんが、ごく普通に「ピアノの音が狂っている」と聴き分け、「調律しなければ」と言う。
このシーンなぜか感動しました。
作者のパメラ・トラバース(1899年~1996年)は、イギリスの児童文学作家です。
彼女のお父さんはアイルランド人、お母さんはスコットランド人。音楽家ではありません。
きっと作家自身の子供ころから、何の違和感もなくピアノや音楽が生活の一部としてあったのでしょう。
それは欧米の普通の一般家庭でもあった光景なのだと思います。
ピアノや音楽文化が普通に根付いている欧米というものを、ディズニー映画を見て感じました。
そして、「日本ではピアノってまだ特別なものなのではないだろうか」とふと考えさせられてしまったのです。