歌を上手に聴かせるためにビブラートは必要 ビブラートをかける簡単な方法を教えます
オペラ歌手がかけているビブラート。ビブラートとは音の高さは保ちながら、のばしている音を揺らすことを言います。いかにも声楽家という感じで、こんな風に歌えたらいいのに、と思いますね。
歌のビブラートは、常にかけっぱなしで歌うようになったのは割と最近で、20世紀後半以降のことなのです。
近代になり音楽そのものが商業化してきて、ホールにたくさんのお客さんを入れてコンサートをしなければならなくなりました。そのため、2000人のホールでも後ろのほうまで豊かに響かせるために大きなビブラートをかけるようになったと言われています。
だから、残響の長い教会や小さな部屋で演奏していた18世紀までは、ノンビブラートで演奏していたわけです。
合唱ではビブラートをあまりかけてはいけませんよ、と教わります。
これは理由があって、あまり極端なビブラートをかけると、隣の音まで拾ってしまうので、パートの音が揃わなくなってしまうためです。
9月25日、私が指導を務める合唱団コール・リバティストに、東京混声合唱団のテノール歌手、秋島先生をお招きしての練習を行いました。
秋島先生は、「合唱ではビブラートはいけないと言われているが、しかし、人間の声には自然なビブラートがあるから、声楽的に言うとある程度のビブラートは必要なのです。完全にビブラートをとってしまっても良くない」とおっしやいます。
私は、合唱団の方々に、ビブラートの練習はぜひやりましょう、と勧めています。
実際の演奏でオペラのようにビブラートを使うわけではありませんが、横隔膜を使って声を出すために、ビブラートをお腹でかける訓練が必要だと思うからです。
これは、のどでかけるちりめんビブラートとは違います。
簡単な方法をご紹介します。
「あ~」と声を出しながら、肺の下あたりを両手でぺこぺこと押すのです。
そうするとアラ不思議。ビブラートがかかります。
お試しあれ。
声帯が反応してくるようになると、だんだん手を使わなくてもビブラートはかけられるようになります。
ロマンティックな曲では大きくかけてもいいですし、合唱のような場合は少なくしていけばいいわけです。
歌は声帯自体はあまりたいした仕事はしていなくて、横隔膜が働いて歌っていることがよく分かると思います。
この日は、ジョスカン・デ・プレの「アヴェマリア」というアカペラの曲を練習しました。この曲はルネサンス時代の曲ですから、ビブラートをかけないスタイルで演奏します。しかし、お腹のビブラートでつかんだ横隔膜を使った発声方法で声を出すことが必要ですので、ぜひ練習してみてください。
合唱とは関係ありませんが、「千の風になって」良い曲ですね。これはちょっとオペラのように歌うとサマになります。お腹を押しながら練習してみてください。コツは長い音をのばすとき、例えば「泣かないでください~」の「い~」などにしっかりかけると良い感じで聴こえますよ。