これからのプロフェッショナルは自分のフィールドを広げることで活躍する トップは10年後を思い描くことができなくてはならない
指揮者の大野和士さん(1960年~)は、今最も注目されている世界のマエストロだと思います。
2010年9月6日から10日まで日経新聞の「人間発見」に大野さんの半生が連載されていましたのでご紹介します。
大野さんは、内戦状態であったクロアチアのザグレブ・フィルで数年間音楽監督として指揮をしていたことがあります。
毎日のように空襲があり、街は灯火管制が敷かれ、避難のため練習も中断される日々。
指揮者は日本人。ソリストはロシア人。団員は敵対するクロアチア人もいれば、セルビア人、またオーストリア人、アメリカ人などもいました。
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そんな中、聴衆が集まり、超満員の演奏会に熱狂したあと真っ暗な街にひそやかに帰っていく。
(中略)
国家がナショナリズムに揺さぶられているこの時に舞台はインターナショナリズムによって音楽を奏でている。音楽の力が人間の感性に訴え、生きる喜びを与えていると感じました。人間の感性を脅かすすべての力に抗っていかなくてはいけないと決意しました。
・・・・・(以上引用)・・・・・
このときの経験は、大野さんが音楽を続けるうえでの基本姿勢となっています。
本当に聴いてもらいたい音楽を人々に届けられるように活動を始めたのです。
15年続いている解説つきのオペラコンサート。病院や障害者施設で音楽を演奏するボランティア「こころふれあいコンサート」など・・・。
数年先まで予定がぎっしりで、欧州と日本を往復する多忙な日々の中、クラッシックの敷居を下げて、たくさんの人に聴いてもらいたいと、休暇もとらずに演奏会を行います。
大野さんは「本当にやりたいことを体力のあるうちにやっておきたいのです」とおっしゃっていました
劇場やコンサートホールという限られた空間を飛び出し、人々のために音楽を演奏するマエストロ。
・・・・・(以下引用)・・・・・
10年後に自分に何が出来るか、常に考えていかなければならない。少なくとも人々の輪を今以上に広げていくことが大事です。そのためにも一流のプロとして勉強を続けるつもりです。
・・・・・(以上引用)・・・・・
これからのプロフェッショナルは、その専門知識や技術を持つ恵まれた立場を自覚し、世の中に伝え、役立っていかなくてはならないと思います。
大野さんは「究極の使命」と言っていますが、それを「高貴な義務」としていく時代になってきているように感じています。