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時代の流れとともに指導方法が変わってきた合唱界の実情

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「このごろ合唱が完全に変わってきたって、他の同業者も話してるんだよ。もう今は極端に厳しい指導はやりにくいね」
 
合唱指揮の先生とお会いし、指導の話になったときのことです。
 
「前はね、"もう、やめだ!"と言って、楽譜を投げつけて、稽古場を出て行っても、幹部が泣きながら"すみません、頑張りますので、先生戻ってください"とすぐに追いかけてきた。でも1995年くらいを境に、"困ったねえ、どうしようか"ってお茶を飲みながら部屋で相談している。怒って思い切り部屋を出たはいいけれど、だれも追いかけてこない。そういう"あれっ?"ていう時期が続いたのが、1995年頃みたいだ。なぜ95年なのかはわからないけれど・・・。」
 
合唱の指導というのは、超体育会系。ある時期までは厳しいことが当たり前。様々な伝説や武勇伝は事欠かきません。
厳しい先生の方が人気がだった時代もあったのです。
怒鳴る、部屋を出る、なんていうのはよくあることだったそうです。
 
私は以前、60年代、70年代にはカリスマと言われていた指揮者の先生のもとで、何年か合唱伴奏の仕事をしたことがありました。
その時、95年はもうとっくに過ぎていたかと思います。
 
とんでもなく厳しい指導法でしたが、内容は本物。
この人についていければ絶対成長するに違いないと思いました。
 
来たばっかりで合唱が初めて、という人でも、教えるとおりに声を出すとあっという間に凄い声に変わる。驚きました。
私は、「こんな先生音大でもいない」と思いました。
 
惚れる人はとことん惚れる。
しかし、徹底的な厳しさについていけず、やめてしまう人も多かったのは確かです。
 
先生の口癖は「厳しくやらないで楽しいの?真剣にやらないで充実するの?」
 
その先生があるときピアニストの私を呼び出してポツリとおっしゃいました。
 
「前と違って、今はやりにくい時代になった。でもボクは自分のやり方を貫くしかない。」
 
そして今は、ほとんど隠遁生活に入られてしまいました。音楽界にとって本当に大きな損失だと思いますが仕方ないのでしょうか。
 
現在の合唱界は、上手な団体も多く、合唱祭という年に一度のイベントには会場でさばききれないほどの団体がエントリーするほど。一見、栄えているように見えます。
しかし、高齢化の波は確実にきており、20年後には衰退するのではないかと危惧されているのです。

私は、単に厳しくする、しない、ということでは語れないと思っています。
本物をやらなくては、本物を育てなくては。
そうでないとこの先は難しいと思っています。
先生の声が聞こえてきます。「あなた、正しいことやってますか?」
 
これからどう教えていくか。
指導者の正念場だと思います。

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