プロとアマチュアの違いとはテンポ感にある
オーケストラや合唱団で、プロとアマチュアの大きな違いがどこでしょうか。
それは、テンポ感です。
テンポ感とは、非常に簡単に言ってしまうと、曲を歌ったり演奏したりするときなどに「1、2、3、4」と一定に数える感覚のことです。
プロは心の中のテンポが絶対に揺るぎません。
そのように日々訓練されています。
テンポを刻むことが出来るのがプロの基本です。
指揮者は最初の訓練で、一秒間に一拍ずつ刻むことができるように練習していきます。
これは、もちろんメトロノームに合わせるとか、時計の秒針を見ながらではなく、一秒間に一拍、つまりメトロノームの60を体の中に持つことを覚えるのです。
最初は難しくてなかなか出来ない人が多いそうです。
それが出来るようになるための良いやり方があります。
この方法は、指揮者の渡邉暁雄さんがおっしゃっていたことを、そのお弟子さんから伺ったのですが、ドイツ語数字で「eins,zwei,drei」と言いながら棒をふると自然と60で合ってくるというもの。音楽とは時間の芸術で、テンポ感を身につけるための訓練は必要なのです。
2010/09/11、私が指導を務める合唱団コール・リバティストに、マエストロをお招きしての稽古を行いました。
ここでも、テンポ感の大切さを教えていただきました。
「アマチュアは、テンポ感の訓練がされていないので、自分の都合によってテンポが揺れてしまいます。合唱でテンポ感がゆれると、縦の線が合わなくなり、ハーモニーがずれてしまうのです。そうなると音楽になりません。プロは指揮者が一回テンポを提示するとそれが永遠に続きます。だから縦が合う。」
「上手なアマチュアコーラスはテンポ感がきちんと出来ています。
そしてプラス、ピッチです。この二つが合えば、必ず音楽になります。
さらに、声がよければ最高ですね」
「上手になるためには、とにかく単純な反復練習が必要です。同じフレーズを200回歌ったところと、20回歌ったところでは、200回歌ったところが必ず上手になります。もちろん正しいのを200回ですよ。間違ったのを何回もやらないように。
大事だと思ったフレーズを一生懸命歌いこむことは大事なことです。」
全員が、謙虚に真摯に打ち込んでいると、あるときふっと誰かに助けられて演奏しているような瞬間が訪れます。
そのようなことは、何回も無いことなのですが。
マエストロは、数多くの経験の中で今まで2回だけそういうことがあったそうです。
まるでミューズの神に助けられている、とでもいうような感覚。
短距離のアスリートも、ベスト記録を出した瞬間というのは、力が抜けて、誰かに助けられているような感覚になるといいます。
演奏でも、こういう瞬間がいつか訪れるといいですね。