「怒ってほしいのに怒ってくれない」 演出家、宮本亜門の指導方法と自分への演出力
演出家の宮本亜門さんは、日本国内はもとより、世界中で大活躍の演出家。
その宮本亜門さんのインタビュー記事が2008/11/05日経「4946」にあり、指導者として参考になりましたので、ご紹介したいと思います。
亜門さんは、「言われたとおりにやってください」ではなく、「自分で考えて自分を出してください」というタイプです。出演者には心を自由にしてほしいと考えます。
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<相手に自由を与えることはかえって厳しい指導法>
ある役者に「もっと厳しく悪いところは怒ってください」と望まれた。でも亜門さんは笑って「悪いけれど僕は一生怒らないよ」。
自由な環境の中で、自分で考えて成長していくことこそが重要。それが自立ということであり、大変厳しい面でもあります。
人間にとって、規律のあるタテ社会は意外に楽です。ビジネスの社会で、上司の言うとおりに仕事をこなすのは進む方向やレールが見える。しかし、自分で責任をもち考えながら前に進むことが最も大切で、自分を最大限活かせることだと僕は信じています。
・・・・・(以上引用)・・・・・
私は、音大付属高校に入学したとき師匠が変わりました。中学生までは、箸の上げ下ろしまで細かく厳しく言う先生。今度の先生は、一曲弾くと「うん、次は?」。次から次と曲を弾いてレッスンは終わります。こちらが自分なりの表現を見つけてこない限り何もおっしゃらない。以前の厳しさ、これは本当の厳しさではなかったのです。今まで言われたとおりにしか弾いてこなかった私は、自分で音楽を作る力がなく空っぽ。そこに気が付いたとき初めて怖くなりました。それからが自分にとってのスタートだったかもしれません。
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<問題に直面したときの解決策は?>
大切なことは「自分が悩んでいる」ということを悲観的にとらえないことです。自分を客観的にみて「自分は人とは違う考えを持っているんだ。変わっているということは個性が豊かだということなんだ」と前向きに生きてみる。過去の偉人は周囲に変わっていると思われていた例が多いですから。
<仕事上の悩みやストレスはどう解決していますか>
悩みやストレスはありません。というより悩みやストレスだと思わないようにしていると言ったほうが正しいかもしれません。トラブルや困難なことに直面すると「面白い課題が来たぞ」と前向きに解釈しようとします。そうした課題を繰り返して解決していくことで人間は成長できるのかもしれません。
・・・・・(以上引用)・・・・・
亜門さんは高校一年のとき、不登校に陥り、1年間引きこもり生活を送っています。そのときたくさんの音楽を聴いて演出家になることを決心しました。実は人生にとって大切な時間だったのですね。
この経験以来、亜門さんは自分の心と折り合いをつけていくことを覚えたのかもしれません。沖縄に移住して心をリセットする場を「演出」しているのもその一つではないかと思います。
自分を追い込まなくてもいいところまで追い込んでしまうと心は自由さを失います。ときには自分が自分の演出家となってみることも良いのではないでしょうか。