競争だからこそ見失ってはならないもの
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近代音楽界にとって、コンクールと音楽というのは切っても切れない関係にあると思います。
昔、パトロンがいて優秀な音楽家を応援し、世に紹介していく、という時代がありました。
しかし、そのような機会に恵まれない無名な音楽家を発掘するのに大いに役立ったのが近代のコンクールです。
音楽が、ある特別な人だけのものではなくなってきたということです。
コンクールも演奏。
良い演奏をすることが求められると思っています。
競争もありますが、戦いではないと考えます。
ただそこには、審査員がいて、人間が点数をつけるという行為があります。
順位をあげるために、どうしたら他のプレイヤーより上手に、しかも目立つ演奏をし、どうやったら審査員に気に入られるか?
コンクールでは、ついそこにとらわれてしまいがちです。
それでは良い演奏とは何か。
聴衆が「素晴らしかった」「感動した」と喜んでくれるのが良い演奏ではないかと思います。
素晴らしい作品に出会う。
作品を練習し感動する。
そしてその感動をより多くの人にも伝えたい。
その想いが演奏へと突き動かす。
そこから出来るだけ遠く離れないようにしなければならない、作品に対する感動を忘れないようにしなければならない、と常に心に楔を打ち続けていくことが必要だと思います。
コンクールは、真摯な耳を持つ聴衆と、評価する審査員、真剣なコンテスタント、音楽界の将来を担う関係者の前での演奏になります。
こういった厳しい聴衆の前でしか磨かれないものがあることも確かなのです。
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