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ライフワークとしての学びを考えます。

壊れ、破り、自分の道をみつける

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20世紀を代表するピアニストの巨匠(1887年~1982年)アルトゥール・ルービンシュタインは若い頃、私生活でも放蕩の限りをつくし、音楽も派手な一般聴衆受けするような演奏スタイルでした。
それが、年齢を重ね還暦を過ぎるあたりから、華やかなタッチを抑制し、だんだん内面重視の演奏に変わってきたのです。
指揮者のバレンボイムと共演したベートーヴェンのピアノ協奏曲「皇帝」は90歳前の録音ですが、スケールが大きく、深く澄み切った音色で、迷いというものを微塵も感じさせません。
私は数ある皇帝の録音では最高峰の超名演だと思います。

7月25日、私が指導を努める合唱団コール・リバティストで、マエストロをお招きしてのボイストレーニングとアンサンブルトレーニングを行いました。
 
本当に人を感動させるような音楽をするために、自分の殻を破ることが必要、というお話をしてくださいました。
 
「ソツがないというよりは、もっと壊れてほしい。
めちゃくちゃな人生を送ってきて、更正した人が出す、壊れていてきれいな声と、もともとがきれいな声とでは、音楽のスケールが違う。」
 
「元暴走族だったのが更正して牧師になった人がいますが、すごい牧師です。」
 
元極道の妻で弁護士の大平光代さんという方がいます。
いじめを苦に割腹自殺未遂、非行の道に走り、暴力団組長と結婚します。そのとき背中に観音様の刺青を彫りました。ホステス時代にアルコールの飲みすぎで肝臓も壊してしまっています。
そんな太平さんは、弁護士になって弱い立場の人々の気持ちが良く分かる、とお話しているのを聞いたことがあります。
一見波乱万丈の人生でも、それが世のため人のために生きてくることがあるのですね。
 
あらゆる作曲家は、一筋縄ではいかないような人生を送ってきている人ばかりです。
作曲家が何を表現したいか、聴衆は何に感動するのか。
 
「守・破・離」ということばがあります。
 
ルービンシュタインや太平さんのような人生はなかなか送れるものではありませんね。私は、まず型にはまって学ぶことも大切だと思います。そこを破るのは自分次第。
大体は、安心な場所に落ち着いてしまいますが、その先に行けるかどうかというところが大変なのです。
 
学んで、壊して、破って、それから初めて本物になっていくのですね。

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