「間」の取りかたが出来を左右する
私が指導を務める合唱団コール・リバティスト2010/05/01の練習日記です。
この日は、マエストロの小屋敷先生をお招きして大倉山記念館というホールでの稽古でした。
大倉山記念館は、昭和7年に建設された建築物。
天井が高く、教会風の残響があります。
普段、視聴覚室などの練習室で歌っていて、それはそれで緻密なハーモニー作りのトレーニングになっています。
しかし、たまには、贅沢ですが広く天井の高いホールでの練習もした方が、響き作りのトレーニングになるのです。
ヨーロッパの、宗教曲を歌う合唱団では、教会のようなところで常に練習しています。
「ホールが合唱団を作る」とまで言われているくらいです。
バイオリニストの千住真理子さんは、響きの練習をするために、わざわざお一人でホールを借りて練習しているそうです。
学生時代から、ある程度曲が仕上がってくると、先生は「あとは広いところで弾いてどうか、だね」とおっしゃいました。
狭いレッスン室でちょうどよく上手に弾いていても、広いとこで弾いたら分からない、ということがよくあるのです。
千住真理子さんのように一人では無理ですが、試験前やコンクール前は、学生皆でホールを借りて練習会を行っていました。
ホールは、場所によっては2秒もの残響と、広い空間があります。
一方、レッスン室はほとんど残響がないようなデッドな空間です。
レッスン室では、細かい表現やテクニックがよく聴こえるのですが、ホールでは残響があるため、あまり細かすぎるところまでは分かりにくいのです。
だからといって雑に演奏していい、というわけでは絶対にないのですが、ホールでは、ある程度スケールの大きい演奏のほうが映えます。
レッスン室ではあまり上手に聴こえなかった人が、ホールだと見違えるように良い演奏をする人がいます。
こういう人はだいたい、広い空間でもよく通る音を持っています。
イチロー選手がバックホームで返すボールのような音、と言ったらいいでしょうか。
もう一つ大事なことは、自分の音を良く聴くことです。
そして残響の多さに合わせて、強弱やテンポ、音の輪郭を加減していきます。
しかし、いくら自分で聴いたとしても、それは舞台上の音。
出来れば、良く分かる人に客席で聴いてもらうのがベストです。
それほど客観的に分からないものなのです。
この日、大倉山ホールでの合唱練習では、指揮者の先生より何度も「輪郭をしっかりください」という指示がありました。
そして、いつもよりゆったりした間をとっていました。
残響のない部屋では間がもたず、速めのテンポになることは良くあることです。
ホールの演奏になれている人は、この間のとりかたが大変上手です。
この間をどうとるか、というので、その人の実力が分かるといわれているほどです。
間の取りかたが抜群の人がいます。
今日はその間を見てみることにいたしましょう。
天才的な喜劇役者ですが、間の取り方が絶妙で、私たちも学べるところがたくさんありますね。