女性の低い声アルトは実は高いという意味がある
混声合唱では、声が高い順に、女性がソプラノ、アルト、男性がテノール、バスという声部に分かれます。
ビクトリア作曲の「マリアよ畏れるな」という曲に[Altissimi]というラテン語が出てきますが、これはアルトの最上級、「至高者の」という意味です。
アルトは女声では低い音域を受け持ちますが、本来「高い」という意味なのです。
男声のテノールより高いということを言っています。
低いと思っていたアルトが、どうしてこのようなことになっているのでしょう?
2010/05/29、私が指導を務める合唱団コール・リバティストにて、プロの合唱団である東京混声合唱団、現役テノールの秋島光一先生をお招きしてのご指導をいただきました。
秋島先生は、お父様が神父様のお家にお生まれになったため、キリスト教の教えについては造詣が深い先生です。
その秋島先生から、お話がありました。
「アルトはテノールより高い、という意味なんですよ。」
「教会の聖歌隊は男性しか声を出してはいけなかったのです。
ユダヤ教もそうでしたし、カトリックも最初のうちはそうでした。」
「なぜかというと、女の人は汚れたもの、だったからです。
神様に、『これは食べてはいけませんよ』と言われていた知恵の実がありました。
それをイブは蛇にだまされて、アダムに勧めたのです。」
「それ以来、女性は男性より罪深いものとなりました。
教会では、ユダヤ教とキリスト教の前半くらいまでは、聖書を読むのも讃美歌を歌うのも、男の人の仕事だったのです。女の人は教会の中では口を開いてはいけないというきまりになっていました。」
「そういうわけで、聖歌隊は全て男声合唱。高いパートは少年合唱が歌っていたのです。
しかし、いつまでもそういうわけにもいかない、ということで世俗曲が始まりました。」
「世俗曲が出てきて、女性も一緒に合唱で歌うようになり、男性より高い声のパートもできました。男声のテノールより高い、という意味でアルトと言われるようになったのです。
ちなみにソプラノは『小さい』という意味ですけれどね。」
アルトに高いという意味があるなんて初めて知りました。
現代の世の中では女性も歌うことが可能になって、女性の音楽への楽しみが増えましたね。
実は、発声的にも、アルトだからといって低くうなるように声をだしてはいけないのです。
どんなに低い音でも、必ず上に感じて明るく声をだすことを気をつけます。
先日、バリトン歌手の方とお話ししていたのですが、
「ボクみたいに低い声域の歌手でも、『ミ』より下は実際より奥まってくぐもった声になりがちなので、すごく気をつけるよ。ほんと、気を抜くとすぐに落ちちゃうからね。」
と言っていました。
私は、ソプラノの声ですが、中音域より低い声域には特に気をつけます。
ソプラノがこの声域を上手に歌えるようになると、さらに表現力に幅がでるからです。
素晴らしいソプラノ歌手のフレーニは、まさにこのあたりの扱いが最高に上手。
高い声の人が低い声を訓練することはとても大事なことなのです。