ここ一番の前日に何をすべきか、どう過ごすか 前日に何をしたかで出来が左右される
演奏会の前日、どのように過ごせばいいのか、どういう練習をしたらいいのか。
その過ごし方次第で、本番の出来が決まってしまうと言っても過言ではないかもしれません。
本番直前まで、舞台のそでに立っているその瞬間まで、安心するということはなかなかありません。
弾けていたと思っていたところが、本番でいきなり弾けなくなる、ということはよくあることです。
フィギュア・スケートの3回転をとぶ気持ちと似ているかもしれません。
前日は、どんな人でも、もう最後のあがきとばかり、いつもよりたくさん練習したくなります。
技術的にはマスターしたはずの、難しいパッセージも、「明日急に弾けなくなるのではないか?」と心配になり何度も何度も弾いて、完璧に出来ているのを確認せずにはいられない人は多いと思います。
たとえ練習はたくさんしてきたとしても、です。
ある時、ピアニストでもある先生に質問したことがあります。
「先生は、リサイタルの前日どのように練習しますか?最後の追い込みでたくさん練習するのですか?」
それに対して先生は
「いやあ・・・私は諦めが早いのよ。
もう2~3日前からあまり練習しなくなるわね。午前中通し稽古をして、気になるところを少し取り出してさらうくらい。」
「でも、前日ともなるとやっぱり心落ち着かないし、何かして気を紛らわそうとするんだけど、庭の草取りをするほど体力も気力もない。気合をいれて料理をする気にもならない。そういう時は、下駄箱の靴を出して、全部磨く。そうするとそのときは忘れるわね。」
「いまさら一生懸命やっても疲れるだけだし、急に上手くなるわけでもないし。
それどころか、前日に譜面を見て、たまたま音の間違いに気がついたら怖いでしょ。
もう直せないから、そのまま弾くことになると思うけど、やっぱり気になって演奏に集中できなくなる。」
とおっしゃいました。
私自身、学生の頃は前の日まできっちり練習していました。
しかし、本番当日にエネルギーがわいてこない感じがして気持ちが入りません。
精神的に追い込みすぎて疲れてしまっていたようです。
この頃前日は、ほとんど練習という練習もせず、いつもどおり生徒をみたり、料理をしたりしています。
人によっては、前日は徹夜して本番に調整してくる人もいます。
人並みはずれたすごい体力と精神力だと思います。
弾いている人が疲れていては、お客様に楽しんでいただくことは出来ませんね。
本番前日は、練習をサボるというわけではなく、「どうやって気分良く弾けるか」ということに全力をあげることが大事なのです。