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ライフワークとしての学びを考えます。

楽譜はどんな楽譜でもよいのか

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「新しい曲は、モーツァルトのソナタにしましょう」
とレッスンで言われて、初めてのモーツァルトです。楽器店に楽譜を買いに行くとします。
どんな譜面を買いますか?
 
初めてなので、とりあえず日本語解説付きの国内出版社にするでしょうか。
 
学生時代、学内でドイツ人ピアニストを招待しての公開レッスンがあったときのことです。
レッスンを受けたのは私の同級生で、曲はベートーヴェンのソナタでした。
楽譜は国内出版社、O社版を持ってきていました。
 
譜面台に置かれた楽譜を見て、ドイツ人ピアニストは
「ん?何これ?新しい版なの?」と興味津々です。
聴きに来ていた教授の先生方は「あらら・・」「ちょっとちょっと・・」などとざわつき始め、苦笑いしている人も。

実は理由は、原典版と、国内出版社の楽譜が異なっていたためです。
 
私が音大付属高校に入学して、初めてのレッスンに、バッハの平均律で国内出版社S社版を持っていったときのことです。
先生は「ヘンレ版を使うように」とおっしゃいます。
 
ヘンレ版とはいわゆる「原典版」のことを言っているのです。
 
例えば、モーツァルトは、自分の曲を出版社に持ち込んだとき、ピアノやフォルテなどの強弱記号やアクセントをほとんど書いていません。
表現は演奏者のイマジネーションにゆだねたのだと考えます。
ベートーヴェンも実際はあまり細かく書き込んでいないようです。
また、作曲家の弟子が書き足したり書き換えているような場合もあり、研究によって、本来の曲があきらかになってきたものもあります。
 
原典版とは作曲家の書いたそのままの楽譜なのです。
 
しかし、経験のあまりない一般の人たちにとっては、原典版はどう弾いてよいやら、わからないと思います。
そのために、編集者が、強弱記号やアクセント、フレージングなどを、親切に書き足してくれている楽譜が国内出版社のものです。
編集者の解釈で書かれている場合も多いのです。
 
この楽譜で弾いたからといって、聴衆が感動しないわけではなく、上手にイマジネーション豊かに弾けばどんな楽譜でも感動するとは思いますが、アカデミックな音大では、原典版を使用することを教えられます。
 
作曲家が本当に書いたことを知ることはとても大事なことなのです。
 
ただ、ヘンレ版はとても高価でしたので、学生の身分では経済的に厳しかった思い出があります。
 
この頃は国内出版社でも、大変優秀な楽譜が出版されており、価格も輸入版の原典版よりお安く購入できるようになったのは嬉しいことですね。

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