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日本人にとっての宗教曲の難しさ

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私が指導を務める合唱団コール・リバティスト2010年4月3日の練習日記です。
マエストロの小屋敷先生をお迎えしての練習でした。
 
曲は、アカペラ宗教曲、ビクトリア(1548年~1611年)作曲の「マリアよおそれるな」です。
 
マリアがキリストを身ごもってしまい、身に覚えのない婚約中のマリアとヨセフは驚き、ショックを受けます。そして天使が「おそれるな」と言う聖書のシーンが、歌詞として使われています。
 
キリストの時代、結婚前の交渉は絶対にあってはならないこと。
ヨセフは
「私はマリアと婚約したけれど、まだ一緒に住んでいない。マリアに赤ちゃんが出来るなんて・・・。大変だ。皆に知られたらどんなことになるだろう。もうマリアとは別れたほうがいいのだろうか。ああ、どうしよう。」
と悩みます。
マリアも覚えがないので、泣きながら苦しむのです。
 
そこに天使が現れて告げます。
「おそれないで。おなかの赤ちゃんは、神さまの力によってできたのです。男の子を産むでしょう。名前をイエスと名づけなさい。その赤ちゃんは、やがて人々を多くの罪から救い出す、すばらしいお方になりますよ。」
 
キリスト教のバックボーンもない日本人にとって、聖書など読んだこともない人の方が多いかと思います。
私は、このお話を初めて聞いたとき「こんなことが本当にあるのだろうか?」と真剣に考えてしまいました。
このような宗教的な香りを伴った曲には、聖書や時代背景の理解が不可欠です。
いくら音だけ完璧に演奏してところで、最終的に信仰心が音に表現できなければ、音楽的な説得力に欠けてしまうのです。
 
作曲家ビクトリアの時代は、深い「マリア信仰」がありました。
新しくプロテスタントが出て来た時期。
ちょうど、マルティン・ルターが活躍した頃でもあります。
カトリックの人たちは「プロテスタントは異端である」と非難しました。
しかしプロテスタントは「マリア信仰は聖書の中に書いていない」と反論し、激しい論争となります。
意見は真っ二つに分かれました。
 
マリアを題材にしていることから、この曲は時代の影響を受けて作曲されたと思われます。
カトリックの方々にとってマリアは大事な信仰の対象であったのです。
こういった時代背景も分かって演奏しなければならないのですね。
 
日本は安土桃山時代。
ヨーロッパではこんな歌が歌われていたのですね。

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