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ライフワークとしての学びを考えます。

約20ワットで動作する脳の動力を最大限に生かすために 「してはいけない五ヵ条」

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冷蔵庫にマグネットで貼り付けている新聞の切り抜きがあります。
3年前、2007年1月1日付けの新聞ですから、すでに黄ばんでしまい、料理の油などでシミだらけです。
目の高さにあるため、冷蔵庫を開けるたびに視界に入ってきます。

日経新聞「私の履歴書」より、ノーベル物理学賞を受賞した江崎玲於奈さんの記事、第一回、「創造力を育てる五ヵ条」です。

・・・・・・・・・・・・・(以下引用)・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『ノーベル賞の秘訣』

「・・・・ではここで、ノーベル賞をとるために、してはいけない五ヵ条を紹介したいと思います」
 私は様々なところで話をするが、聴衆を大いに刺激し、奮起させる効果があるので、最後はいつも次の五ヵ条で締め括ることにしている。

第一に、今までの行き掛かりにとらわれてはいけません。しがらみという呪縛を解かない限り、思い切った創造性の発揮など望めません。

第二に、教えはいくら受けても結構ですが、大先生にのめり込んではいけません。のめり込みますと権威の呪縛は避けられず、自由奔放な若さを失い、自分の創造力も萎縮します。

第三に、無用ながらくた情報に惑わされてはいけません。約20ワットで動作するわれわれの限定された頭脳を配慮し、選択された必須の情報だけを処理します。

第四に、自分の主張をつらぬくためには戦うことを避けてはいけません。

第五に、子供のようなあくなき好奇心と初々しい感性を失ってはいけません。

・・・・・・・・・・・・・(以上引用)・・・・・・・・・・・・・・・・・

第二条、これはクラッシックの音楽家が陥りやすいところだと思います。
なぜでしょうか。

どんな演奏家も最初から1人で演奏できたわけではありません。
必ず師匠のもと師事を受けています。

音大によっても指導方法の特徴ははっきりしていて、例えば、国立G大、私立T大では演奏を聴くだけで、どちらかはっきり当てられるほど。
国際コンクールでは、プロフィールを見なくても、「モスクワ音楽院」「パリ国立音楽院」「ジュリアード音楽院」など、演奏スタイルですぐに分かってしまうくらいメソッドの違いは歴然としています。

音大というかなり大きな枠の中でもそうですから、1人の尊敬する先生に師事する場合、知らないうちに創造性がロックオンされてしまう弊害も含んでいることを常に意識しなければなりません。
ただ、20世紀前半の大ピアニスト、コルトーのように、その弟子たちが非常に強い個性を持っている例もあり、先生の器の大きさにもよるのかもしれませんが・・・・。

あるところまでは、先生を尊敬して習うこと、これは絶対に必要だと思います。
しかし、大事なのはその後です。

若い頃から活躍している演奏家に対して、批評家から「・・・・十で天才、二十歳過ぎればただの人」などと残念な言い方をされてしまうケースが多いのも、そこに一つの要因があるような気がします。

江崎さんは、

「新しい分野だったら二流の研究者でも一流の論文が書ける。新分野開拓をし拡大する分野ではすべてが勝者になる」

と、真空管研究から、当時新しい分野でもあった半導体研究に移った方です。

前例もなく、まだ誰も歩いたことの無い、道無き道を行くことは不安なものだと思います。
しかし、大海原で航路に迷った冒険者に、南十字星のごとく勇気を与えてくれるのがこの五ヵ条ですね。

私は、自分のつまらない小さな迷いが出たとき、必ずこの五ヵ条を読み直すことにしています。

そしてこのブログを書くことで、わずか20ワットでしか動作しない我が左脳を久しぶりに再稼動させようとしているところであります。

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