Google for Startups Campusを無償で提供するGoogleの度量
Googleが「Google for Startups Campus 東京」を開設するとの発表をした。これ、起業家を支援するためのGoogleの取り組みで、Googleではビジネスとは捉えておらず無償で支援をするプログラムになっている。
Googleでは、2020年までにグローバルで1,000万人の起業家に貢献することを目指している。そのためのStartups Campusを新たに東京渋谷に開設、これは世界では7箇所目になる。年内に開設し、起業家のためのグローバルなハブとなる予定だ。
Startups Campusは、既にロンドン、マドリード、サンパウロ、ソウル、テルアビブ、ワルシャワに開設されている。起業家は、どの場所にも基本的には自由に入れる。新たに東京のキャンパスを開設し、日本を起点に次世代の起業家を育て、世界の起業家とつなげていく場となる。日本には若い世代に優秀な人たちがいて、彼らが次世代の起業家としてグローバルで活躍することを目指すこととなる。
このGoogleのStartups Campsuについては、Googleの専任チームがサポートする。既に行われた支援で、2018年には調達した資金は8億ドルに上る。創出した仕事は、4,550もあったとのこと。起業家がここで受けたトレーニングの時間も、莫大なものになる。
このStartups Campusで、直接Googleのチームから支援を受けることができる6ヶ月のプログラム「レジデンシープログラム」が実施される。これは、半年ごとにベストなアーリーステージ企業を選び、レジデンシーとしてキャンパスに呼び6ヶ月の間1対1の支援、トレーニング、さらにはプロダクト開発の支援も行う。拠点の提供だけでなく、Googleの各種製品を活用でき、新たなビジネスを世界に展開するためのベストプラクティスも提供される。
一連の起業家支援のプログラムを、Googleは無償で提供する。Googleはカリフォルニア州のとあるガレージで生まれたスタートアップ企業だ。スタートアップを支援することは、同社のDNAに含まれていると言う。なので、目的は起業家を支援してなんらか儲けることではない。あくまでも支援。そのため、ボランティアではなく仕事として対応する専任チームを置いているにもかかわらず、お金は一切取らない。むしろ専任チーム以外のGoogle社員にも、起業家を支援する活動に積極的に参加するようにとの方針も打ち出されている。
こういったことができるのは、Googleには他に儲ける術があるからだと言うのは、Google for Startups Partnerships Managerのマイケル キム氏だ。「Googleの目的は単純明快であり、Google自体がスタートアップから始まったからです。起業家の支援は既にGoogleのDNAの一部であり、スタートアップの支援は当たり前のことなのです」と。
東京のキャンパスは、東京にあるからと言って必ずしも日本人の起業家だけをサポートするものではない。どこの人かは関係なく、キーとなるのはグローバルにビジネスを展開する起業家だということ。なのでレジデンシープログラムに呼ばれる起業家の基準にも、ビジネスのグローバル化の可能性が入ってくることになる。
ただただ、スタートアップを支援するため、と言うGoogleの言葉に嘘はないだろう。もちろん支援した起業家にGoogleが投資し、結果的に何らか利益を得るかもしれない。さらには、その企業のテクノロジーをGoogleのサービスに取り込んで、新しいサービスが生まれるかもしれない。とはいえそれらは、あくまでもその起業家を支援した結果、と言うことになるのだ。
こういった取り組みを無償で提供できる文化があることは、なかなか日本企業には真似できないところだろう。しかしながらこういったことが企業のDNAとなっていないと、これからは世界で勝利する企業になれないのかもしれない。