SAPが目指す顧客体験の向上と、女性が活躍できる社会を作ること
SAPの年次カンファレンスイベント「SAPPHIRE NOW 2019」に参加。今年はXデータ(eXperience Data)とOデータ(Operational Data)の2つを合わせることでより良い顧客体験を提供でき、より良い顧客体験を提供する会社がエクスペリエンス・エコノミーの中で勝利するとの話題が中心だ。
●SAPのエクスペリエンスの戦略はXデータとOデータを統合して顧客体験を向上する
顧客体験、企業と顧客とのエンゲージメントといったテーマは、今やどのベンダーも話題にする。これ、どちらかと言えば旧い基幹系システムであるSoRの仕組みの維持に手間とコストをかけるのではなく、ソーシャルネットワークのデータなどの顧客にまつわるさまざまなデータを活用し、それらに対しAIや機械学習、IoTなどの新しい技術を適用して実現する、SoEの仕組みに取り組みましょうとの文脈で語られることが多い。
SAPの場合は長年に亘り提供してきた確固たるERPアプリケーションがあり、それによりOデータの蓄積、管理では他のベンダーの先を行く完璧な存在。さらにS/4HANAという新しいアプリケーションになり、Oデータのリアルタイムなコントロールも可能としている。これに加え、今後はXデータに本格的に取り組む。Xデータを扱う仕組みの1つは昨年発表したC/4HANAということになる。
さらに今回Xデータでフォーカスしているのが、アンケート分析の仕組みを提供するQualtricsだ。Qualtricsはたんにアンケートを作ってそこから得られる回答を管理できるだけでなく、自動で結果を分析して結果の共有なども容易にできる仕組み。アンケート結果とOデータを組み合わせることで、アンケートに答えた顧客がどういう感情にあるかに応じて次なるアクションも示唆することができる。Qualtricsにとっては、C/4HANAで管理するCRMのデータもOデータの1つと捉えることもできる。
●ダイバーシティや女性の活躍もSAPの重要なテーマ
エクスペリエンスが大きなテーマとなる中、SAPPHIREではダイバーシティや女性の活躍も1つのテーマとなっていた。SAPではエクスペリエンスを向上させて、社会を、世界を良くしていくことを考えている。そして、世界各国の女性の生活もより良いものにしていく。これと同じ考え方を持っていた人だと紹介されたのが、モデルでもありファッション業界のディスラプターでもあるカーリー・クロス氏だった。彼女は新たにSAPのBrand Ambassadorに就任している。
14歳からモデルとしてファッション業界で仕事をしており、ランウェイでの経験など楽しかったとクロス氏は言う。そしてそれ以上に、ファッションの仕事をしてきたことでさまざまな起業家などと会えたことが良かったと言う。彼女がファッション業界で仕事をしている間に、テクノロジーが入ってきてどんどん変化が起きている。そういった中でモデルの自分だけでなく、自身のありのままの姿を表現するためにSNSなどにも触れた。さまざまな仕組みの裏側にコンピュータのコードがあることを知る。それに興味を持ち、もっと勉強をしたいと考えて、実際に学校に通って勉強をしたとのこと。
コーディングを身につけ、テクノロジーを使ってファッション業界をどう変えられるかを考えた。また、こういったスキルを、ファッションに興味を持つような若い女性たちにも提供しようと考える。彼女たちも、クロス氏と同じようになりたいと考えるはずで、そうであるならば若い女性がコーディングをできるようにしようとするのだ。自分がスキルを持ちデジタルを扱うようになって変わったことを、若い彼女たちに伝えたいと考えたのだ。そこから若い女性がデジタルテクノロジーを学べるようにしようと考え、実際に夏の間にスカラシップのクラスを開設する。参加者をYouTubeで募集したところ、1万人以上が申し込んだとのことだ。
これは、若い女性たちもスキルセットを得ることは重要だと考える人が多かったと言うこと。この経験は、スキルを得るための学ぶ機会を与えるだけでなく、集まった人たちのコミュニティも大事だったことに気付かされたそうだ。女性がテクノロジーを学ぶことは難しいものもまだまだあるが、これからはそれをSAPと一緒になってサポートすることになるようだ。
もう1人基調講演のゲストとして登場したのが、女優であり慈善活動家でもあるサンドラ・ブロック氏だ。女優や俳優は、最初のうちは仕事がくれば御の字。やっと手に入れた配役では、自分の台詞がいくつあるかといったところから入る。そして女優であれ俳優であれ、いつも仕事があるとは限らない。
そのような状況から人気が出れば、仕事を選べるようになる。そうなれば、女優の仕事のジャーニーの中で意味を考えながら仕事を選ぶことになる。「今はかなり感覚で仕事を選んでいます」とブロック氏。とはいえ、映画なりのオーディエンスにとって、何が一番良いかを考えるようにしていると言う。演技の仕事は、人に喜びを与えるものであり、そのためのビジョンをどう共有するかを考えていくことになる。そしてそれを感じないと演技できないとも言う。また映画の世界はチームでものを作り上げていくことであり、それは企業がビジネスを行うのと似ているだろうと言う。
彼女は、今Netflixの映像作品にも参加している。これは長く映画の仕事をしていた人たちからすれば大きなチャレンジでもある。彼女自身は、Netflixに行くことをそれほど深く考えずに感覚的に良いのではないかと思ったようだ。これまでの映画制作と比べればストリーミングは新しい取り組みであり、ある意味これまでとは異なる人たちが制作を行っている。そこには映画にはないクリエイティビティがあり、映画とは異なる余裕もあるようだ。その上でNetflixの世界では女優や俳優をより人として扱いしてくれる。そこの部分はむしろ好きになれるポイントのようだ。結果的にストリーミングの世界が持つ多様性のようなものが、映画の世界に影響を与えているだろうとも言う。
チームという中では、人の話を聞く人がベストな人だろうと言う。それによりお互いがサポートできるチームが素晴らしい。なので、今後のことで何かアドバイスするならば、人の話を良く聞くようにすることだとブロック氏は言う。