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インダストリー4.0が製造現場の生産をコモディティ化する

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 ここ最近、インダストリー4.0や製造業のIoT活用といった切り口で取材活動を行っている。ブロガーの林さんも執筆しているが、『インダストリー4.0の衝撃』というムックの制作も少しお手伝いした。

 さまざまな企業、経産省の方などにも話を訊いて、インダストリー4.0がつなぐことでたんなるスマート工場を作るという世界から、サプライチェーンや顧客をもつないだもっと大きな革新を目指そうとしているものだということが分かってきた。

 そんな中、今日はコンサルティング会社のPwCが記者向けにインダストリー4.0の説明会を開催した。ドイツから来日したPwCドイツのステファン・シュラウフ氏は「1970年代に製造業の中で自動化が始まり、今インダストリー4.0に大きな投資がなされている。1970年代とインダストリー4.0のの大きな違いは、センサーが豊富に使えるようになったこと。さらにそれらが1つの機械の中だけでなく、さまざまなものと連携して使えることです」と言う。

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 このさまざまなものと連携する仕組みを使って、従来であれば企業、あるいはせいぜいグループ内でつながっていた世界が、サプライチェーンなどのパートナーや顧客までつながるようになる。それらにより形成されるバリューチェーン全体を最適化することで、新たな革新が生まれるのがインダストリー4.0というわけだ。

 もう1つ従来のスマート工場との違いについてシュラウフ氏は「インダストリー4.0が大胆なのは、オープンシステムにより企業間を結ぶことで、インダストリーを越えた水平連携のところです。さらにアナリティクスやAI的なものも入っているところが従来の考え方と違うところです」と言う。

 PwCのとらえ方で面白いなと思ったのが、このつながりのところを水平統合、垂直統合と捉えている点だ。垂直統合は、主には企業内の統合だ。工場内だけでなく、営業や業務部門、場合によっては物流やアフターサービスといった部門までをつなぐ。これはERPなどと工場や物流の仕組みをつなぐことでも実現できる。どちらかとイントラネット・オブ・シングス的なテクノロジーで統合できる世界だろう。これを実現するだけでも、企業内の最適化が図れるわけであり大きな効果が期待できる。

 水平統合は製造業の企業の仕組みとサプライチェーンのパートナーや顧客まで広げる統合だ。これにより、製品を提供するだけでなく、予防保守や高度なアフターサービスなど新たな価値も提供できる。また、リアルタイムにつなぐことで、バリューチェーン全体の把握が可能となり、タイムリーに個別のニーズに合った製品の開発生産、提供も可能になる。これがさらに発展すると、GEなどが先行している、製造業のサービス化という変革になるわけだ。水平と垂直の統合は、双方を融合して並行に実施する必要があるだろう。

 もう1つ今日のPwCのセッションで指摘していたのが、製造業の生産という部分がインダストリー4.0でコモディティ化するということ。つまりは、インダストリー4.0の世界では、現場力に支えられてきた「生産」というものが製造業の競争の源泉にはならなくなるのだ。これはスマートフォンの素性などを見ても、必ずしも高性能で洗練された機種が市場で評価されるとは限らない現状を見ても納得できる.ある意味不完全でも市場に出し、使ってもらっているうちに変化してユーザーに受け入れられるモノに変化させていく。そう考えると、確かに現場の生産力ではなかなか太刀打ちできない世界がすでに動き始めている。

 そうなれば、製造業は競争の場を自ら変えていかなければならないことに。これは現場力を捨てるということではないだろう。生産の現場力を活かすことのできる「競争の場」を新たに見つけそこに注力することだ。たとえば、長い期間壊れないモノを作り、そこから生まれる価値をサービスとして提供すれば、その企業の利益率はかなり高まることになる。つまりは、壊れないことが競争力になるのだ。ところが壊れない製品を安く売ってしまうと、そういう成功のビジネスモデルのしなりは書けない。

 今日のセミナーの中でも、インダストリー4.0の世界になったときに、自分たちはどのような価値を提供する企業になるのかを考え直す時期にあるとの指摘があった。もちろんインダストリー4.0に対応する製品を提供する立場もある。それからインダストリー4.0のシステムインテグレーターやオペレーションサービスプロバイダーになる選択もあるだろう。とにかく、いままでと同じやり方、発想、考え方ではダメだと言うことだけは明らかだ。 

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