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鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

IBMのメインフレームはレガシーではなくエンタープライズだった

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 ここ最近、IBMの話題に触れる機会が増えている。以前はDB2の話題を追いかける位だったのだが、最近は幅広く取材させてもらっている。今回は、メインフレームであるzEnterpriseに関するブロガー向けミーティングに参加してきた。

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 IBMを幅広く取材していると、ことあるごとに技術力の深さに感心させられる。Watsonのようなソフトウェアの技術革新もさすがだなと思うし、今回接したzEnterprise、そう世の中でレガシーシステムと言われるメインフレームにおいても、技術的な進化がけっこうすごいんだなぁと改めて思わされることに。

 現状、IT業界で当たり前になりつつある多くの「新しいIT」は、IBMでは結構な部分をメインフレームの上で早々に実装してきた技術でもある。仮想化なんかはその最たるものだろう。現状のzEnterpriseは内部的にはすべてのリソースが仮想化でき、ソフトウェア的にもハードウェア的にもリソースを柔軟に割り当ててかなりきめ細かく制御できる。あたかも小さなクラウドのデータセンターが、1台のzEnterpriseというメインフレーム筐体の中にすっぽりと収まっているという感じか。

 当然ながら、これをプライベートクラウドのプラットフォームとして利用することもできる。Linuxも動いているしJavaVMも動くので、ごく普通にオープン系のアプリケーションをコンソリデーションすることが可能だ。実際、3,000台のLinuxサーバーの統合プラットフォームとして、zEnterpriseを活用している例もあるそうだ。

 また、現状のzEnterpriseではハードウェア的にもかなり最先端の取り組みをしている。ネットワークやバスまわり、CPU、メモリー間の通信などなど、かなり新しい最先端技術が投入されている。そこで実績を得た仕組みは、量産化してオープン系のPureシリーズのハードウェアに搭載されたりもしているとか。なので、同じインテルCPU、同じメモリー量の汎用x86サーバーで動いているアプリケーションをPureに載せ替えるだけで、数倍速くなることもあるのだとか。

 この「最先端技術に投資する」ができるのは、メインフレームはそれなりに高いコストをかけられるからだとのこと。最初からコストを安くすることで、ぎちぎちに制約があるオープン系の汎用ハードウェアではなかなかこれができるものではない。

 ちなみに、IBMのzEnterpriseはもうすぐ50周年を迎える息の極めて長いシステムだ。その長い期間、基本的なアーキテクチャは継承されているというのもすごいこと。とはいえ、このことが逆に「レガシー」というイメージにつながっているのかもしれない。BM以外のメインフレームの進化が止まっているというのも、レガシー感を増すところかもしれない。IBMだけはメインフレームも進化を続けていて、それも最先端のエンタープライズだと彼らは主張する。

 たしかにそうなのだと思わされるところは、たとえばCPUにも見られる。現状のzEnterpriseで利用されているzEC12というプロセッサの動作クロックは5.5GHzもある。インテル系のチップがクロックを上げるという進化を半ばあきらめマルチスレッド化に走っている中、メインフレームのCPUはいまも進化を続けているということだろう。まあそのせいもあり、写真のような「大規模なエアコンの冷却装置」かというくらい立派な空冷装置が、いまのzEnterpriseの筐体には組み込まれているけれど。

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 zEnterprise自体はそれなりに大きな筐体で電力もそれなりに消費するだろうが、これにたくさんのシステムを柔軟に搭載できると考えれば、結果的には集約されスペースも消費電力も小さくなる効果が期待できる。なんと言っても、信頼性が高いので運用管理、保守メンテナンスの手間が小さくなる。とくに高可用性のシステムが欲しいという際には、効果的だろう。

 先日IBMはWatsonを動かすためもあり、クラウドサービスのSoftLayerにPowerベースのプラットフォームを追加している。今後、市場がより可用性、信頼性の高いサービスをクラウド上でも望めば、zEnterpriseがSoftLayerというクラウドサービスの1つのメニューとして利用できるようにもなるだろう。

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