東京五輪のころにITの世界にどんな進化が訪れているのかを、2014年は取材テーマにしたい
2013年も、あっという間に過ぎてしまった。今年は少し、仕事を取り巻く環境を変えたこともあり、うまくペースがつかみきれないとろこもあった。来年は、もっと効率的に進められるように工夫をしたいと思う年末。
ここ最近の仕事の中心は、エンタープライズITの取材をしてそれを記事にするというもの。そんななか、2013年に、個人的にもっとも興味を惹いたのはIBMの「Watson」だった。人間のクイズ王に勝利したのは知っていたが、それはあくまでもIBM基礎研究所の「研究の範疇」であり、それがビジネスの世界で利用できるようになるには、まだまだ時間がかかる実験的なものだと思っていた。
ところが、その技術はすでに医療分野では医師の診断サポートに利用されていたりと、さまざまな分野での適用が始まりつつあるとのこと。数年後にはこのWatsonが、米国の医師国家試験的なものに合格するだろうというのにも、かなり驚かされた。こんな話を聞かされると、「IBMなかなかやるな」と思うのだ。
このWatsonの技術を使ったサービス、来年には市場投入される予定。まずは、ヘルプデスクやコールセンターのような「質問して回答に導く」といった領域での利用が期待されている。製品やサービスがないのに、すでに出たら購入するという顧客が何社もいるというのだから、これまた驚かされる。
残念なのが、現時点では日本語でのサービス化は未定ということだ。とはいえ、先日、IBM基礎研究所の成果を取材した際に聞いたところでは、何らか技術的な壁があって日本語対応ができないわけではないとのこと。ようは、データとして日本語の意味の部分を蓄積できれば、現状のWatsonのロジックで「質問の意味を理解して最適な回答に導く」という機能は、日本語に対応できるらしい。このあたりの実現については、日本IBMへ是非とも期待したいところだ。
この基礎研究所への取材の際、感じたことがある。当初は、基礎研究所の成果はあくまでも将来、未来のための基礎研究であり、それを現実の世界に応用するのとはまったく別だと思っていた。なので、どちらかというと研究内容は門外不出で、外に紹介されるのは差し障りのないごく一部。そして、得られる成果はIBM内部でのみ最大限に利用するとしか考えていないのではと思っていたのだ。
ところがここ最近は少し様子が違うようで、研究成果をいかにしてビジネスなりに結び付けていくのかを工夫し始めたようだ。なので、自社だけでなく、研究所の成果をパートナーなりとも協力し現実の製品やサービスにしていくことにも取り組み始めている。そのためもあり、たとえば東京の拠点を便のいい豊洲に設け、新たなコラボレーションも模索しているというわけだ。
Watsonのような興味深い技術は、取材していて面白い。これが現実に活用されたら、どんな新しい世界が生まれるのかと想像すると、ちょっとワクワクする。とはいえ、技術的に優れているから、それでビジネスがうまくいくとは限らない。最近のITベンチャー系は、技術的にはたいしたことはないけれど、ビジネス的には大きな成功を収めている例も多い。というかいまのITの世界は、どちらかといえば後者のほうが主流になりつつある。
記事で取りあげる題材も、どうしてもいまのビジネスの話、せいぜい1、2年後どうなるかということに着目しがちだ。変化の激しい世界であり、そういったものももちろん大事だ。しかし、3年後、5年後にどうなっているのか、そういう題材も本質的な部分では重要。なので、来年は「将来を見据えた深い技術」の部分も積極的に取りあげたい。少なくとも東京五輪が開催されるころに、ITの世界がどうなっているかを考えてみたい。これは、2014年の、1つ個人的なテーマにしたいと思う。