【書評】DB2 10 エバリュエーション・ガイドブック
IBMのデータベース「DB2 10」のガイドブックが新たに刊行された。献本されたので、内容を少しだけ紹介する。
IBM DB2は、メインフレームからめんめんと続く、ある意味由緒正しき正当なリレーショナルデータベース製品だ。この本は、その最新バージョンであるDB2 10のガイドブック。「DB2 9.7」のガイドブックも同じように刊行されていたのだが、そちらは205ページだったのに対し、今回の書籍は283ページと大幅にページが増えている。
その理由の大きな要因となっているのが、Oracle Real Application Clustersのライバル機能でもあるDB2 pureScaleについての解説が加わっているから。DB2は、バージョン9の時代くらいまでは、先行するOracle Databaseに追いつけ追い越せで、機能、性能の拡張が行われてきたイメージがある。9.7くらいからIBMらしさ、DB2らしさが発揮されるようになり、さらに10でその傾向がかなりはっきりとしてきたと思っている。その象徴とも言える機能の1つが、pureScaleだろう。
このpureScaleについては、第4章の1でたっぷりと解説されている。DB2 pureScaleとは何者か。RACとの違いについても、この章を読めば十分に理解できる。クラスター機能に関する用語がOracleとIBMでは微妙に異なるので、Oracle経験者は、Oracleの何をDB2の何と置き換えればいいのかも、ここを読めば分かるだろう。IBMの主張する拡張性と可用性の両立が、なぜ実現できているかについても理解できるだろう。
この他にもDB2の特長といえば、XML機能がある。これ、いまではpureXMLと呼ばれるようになったようだ。pureXMLのアーキテクチャ、ハブリッドデータベースをどのように構成しているかなどの解説が、7章の1で行われている。さらに7章では、最近流行のHadoopとの連携についても紹介している。HDFSとMapReduceとはどういうもので、DB2とどう連携させればいいのか。さらに、具体的にDB2と連携するためのソースコード例も示し解説が行われている。
もう1つ、DB2 10で面白い機能が「タイム・トラベル照会」。こちらにつていは、8章の3で解説されている。過去、未来の時間軸についても検索対象にしてしまうとうもので、未来のデータをあらかじめ登録できるというなかなかユニークな機能だ。こちらについても、タイムトラベル照会機能を利用するためのCREATE TABLE文が具体的に例示されているので、SQLが分かっている人には、この機能がどういうものなのかを容易に理解できるだろう。
もちろん最新機能だけでなく、この書籍ではDB2 10について幅広く解説が行われている。DB2に関わっているエンジニアはもちろん、OracleとDB2の違いが気になる人にも、かなり参考になる書籍だ。
<目次>
1 DB2とは
1.1 DB2の歴史
1.2 DB2がもたらすビジネスの価値
2 DB2の基本機能とアーキテクチャー
2.1 基本アーキテクチャー
2.2 運用しやすいデータベース
3 TCOの削減と資源の有効活用
3.1 効率的なワークロード管理
3.2 ストレージの最適化
4 止まらないビジネスを支えるデータベース:可用性とスケーラビリティー
4.1 スケーラビリティーと可用性
4.2 高可用性災害時リカバリー(HADR)
5 高速なデータベース:パフォーマンスと拡張性
5.1 高速なデータベース
6 よりセキュアなデータベース:柔軟なセキュリティー
6.1 セキュアなデータベース
7 ビッグデータ時代の多種データへの対応
7.1 pureXML
7.2 DB2とビッグデータ
8 新しい運用管理ツールとアプリケーション開発の生産性向上
8.1 運用・開発ツール
8.2 パフォーマンス管理ツール
8.3 タイム・トラベル照会
8.4 DB2への移行