システム管理ツールもアプライアンスで
ここ最近、エンタープライズITの世界では、アプライアンスが流行っている。ハードウェアにソフトウェアをあらかじめ入れ込んで、オールインワンで提供するというやつだ。
OracleやMicrosoft(ハードウェアはHP)、EMCなどの大手ベンダーが、いまのところデータベースやBIなどの分野でアプライアンス製品を提供していて、業界では注目を集めている。その他にも、従来からメールのゲートウェイだったり、セキュリティ対策ソフトウェアを搭載したものだったりが、相当の種類、市場に投入されている。
で、今日、デルがシステム管理ツールを搭載したアプライアンス製品の提供を開始するという発表を行ったのだ。Dell KACEというもので、2003年に米国で創業した企業を2010年にデルが買収し、先行して英語圏の国々で製品化していたものを、今回日本語化して日本でもデルブランドで提供を開始したというもの。デルは、2年くらい前からビジネスの方針変更があり、積極的な買収戦略を実施しているとか。その1つがiSCSIのストレージとして有名だったEQUALLOGICの買収であり、じつは日本ではまだ展開を開始していないが、すでにさまざまなソフトウェア製品買収が行われているとか。今後、それら製品を日本市場でも展開するとのことで、こういったことでPCベンダーというイメージからの本格的な脱皮を図ろうとしているようだ。
今回のKACEはすでに米国などでは多数の実績があるとのこと。1台のアプライアンスで100クライアントから20000クライアントまで対応でき、デルではSMB市場向けの製品として位置づけているが、印象としてはミドルよりも上の市場に対応する製品と言えそうだ。特長は、アプライアンスでシステムのライフサイクル管理をオールインワンで提供できること。そして、そのものの価格が比較的安価に設定されており、導入のための手間がかからないことと合わせ、「安い」ことも売りの1つ。
もう1つの特長が、マルチOSに対応するところ。WindowsはもちろんMac OS XとRedHat Linuxにも対応しており、ディスクイメージ管理なんかもこれらのOSに対してできるので、インストールなどの作業負荷を軽減できるとか。とはいえ、日本ではMacやLinuxをクライアントで利用している企業は少ないので、マルチOS対応が売りになるかは厳しいところ。
さらに興味深いのが、ハードウェアのアプライアンスに加え、VMwareの仮想化環境で動く仮想アプライアンスの形でも製品が提供されるということ。サーバー環境に余裕があるのなら、仮想イメージを展開するだけでアプライアンスの導入ができることになる。ハードウェアに依存する機能が特にないのであれば、今後はこの仮想アプライアンスでの提供というのも増えていくのかなと思った次第。
個人的にちょっと残念かなと思ったのは、このアプライアンスK1000、K2000という2つのタイプで提供されること。2000は1000のアップグレード版ではなく、中身の管理ソフトウェアの種類が異なる。1000のほうがManagemant Applianceで資産管理やソフトウェアの配布、セキュリティパッチの適用機能などが含まれ、2000のほうはDeplyment ApplianceでOSイメージの管理やネットワーク経由でのOSのインストールなどの機能が含まれている。つまりこれらすべてを導入したければ、2台のアプライアンスを導入することになるのだ。であるならば、全部の機能を1台に入れて、ライセンスの選択で必要な機能を選べるアプライアンスにすればよかったのではと思うのだ。管理ツールの導入でサーバーが2台増えるのもなぁとも思うし、仮想アプライアンスにして1台のサーバーに入れるほうがいいのではと思ったり。
日本には、老舗の日立のJP1などもあり、新顔の管理ツールがシェアを獲得していくのはなかなか難しい面もあるかもしれない。とはいえ、市場のアプライアンスの波を上手く捕まえることができれば、それなりに波に乗ることも可能ではと思わせる製品である。と考えると、このシステム管理ツールという市場にも、新たにアプライアンス製品の参入が始まるのかもしれないと思ったり。