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鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

EPUBでなくあえてHTML5ベースでアプリ化してみた

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 先月末に『nomad HAWAII』というiPhone/iPad対応の電子書籍アプリをリリースした。今回はEPUBではなく、あえてHTML5ベースでコンテンツを作成し、それをアプリ化したのだった。

HTML5でポータビリティ性を確保

 今回のアプリ、Appleの拡張仕様を使えばEPUBでも十分に実現できる。ページレイアウトを固定化したいという意図もあったので、使うならAppleのページ固定形式のEPUBだ。現在、この固定形式を使って写真集的なものも企画している。かならずしもリフローすることが電子書籍のメリットではないので、このあたりは適宜使い分けることになる。

 で、今回はEPUBではなく、あえてHTML5にした。表現力という意味では、若干EPUBよりも自由度は高い。さらに、EPUBを作るよりもHTML5のほうが制作現場の作業もやりやすいというのもある。オーサリングするためのツールなりもこなれているからだ。とはいえ、今回はそういった理由だけでなく、ポータビリティ性の高さで選んだというのが、最大の理由。HTML5で作っておけば、ちょっと手を入れるだけでPC上でもWebブラウザさえあれば閲覧可能。今回はiPhone/iPadに最適化して制作しているけれど、画面サイズがまちまちのAndroidにも容易に展開できる。

 これ、本来はEPUBで作っておけば、ポータビリティ性なんて心配する必要ないはず。とはいえ、EPUBの課題はそれぞれの端末環境に対応できるような、書店というか販売サイトがいまいちなこと。iPhone/iPadを対象とするなら、やはりiBooks Storeに出したい。けれど、相変わらず日本語書籍の販売ができない情況が続いている。Androidは、そもそも日本語のEPUBの流通マーケットはほとんど始まっていないと言っていいだろう。

 今回のコンテンツは「販売したい」というのがあった。なので、現状だと選択肢としてはアプリ化に落ち着いた。まずはもっともたくさん数が出ているiPhone/iPadをターゲットに考え、将来的にはHTML5ベースであることが、より広くコンテンツを提供できるのだというショウケースにしたいとの意図もあった。前述したように、1ページごとのコンテンツはHTML5なので、インデックスを付け加えればすぐにブラウザで閲覧できる。それをひとまとめにしてCD-ROMに焼けば、プロモーション用に配布なんてことも簡単だ。

電子の世界とリアルの融合を目指す

 もう1つ、今回想定しているのは、電子の世界とリアルの融合。電子書籍だけで終わるのでなく、当初からFacebookやflickr、Twitterとの連携をとるようにしている。Facebookにはあらかじめコミュニティサイトを作っておき、電子だけで終わらせない工夫、さらに口コミで情報が広がっていくことを期待した作りになっている。

 ここまでなら電子の世界の中だけで終わってしまうが、今回題材にしているのは「旅」という人が実際に活動することを題材にしている。なので、この電子書籍を手にしてくれた人が、リアルに旅に出てこの電子書籍で紹介されているところを訪れてもらう。そこで、同じようなアングルで写真を撮ってもいいし、もっと面白い、芸術的な写真を撮るかもしれない。将来的には、そういった写真とその人の旅先の印象などを募って、電子書籍の第二版ではコンテンツに加えて行くというのもありかなと考えている。これ、読者とともに成長する電子書籍というわけだ。

 旅だけじゃなく、たとえばバイクのカタログ書籍をプロのライターで作って、第二版には電子書籍を手にしたユーザーが自分のバイクのインプレッションを書いて投稿しそれをコンテンツに加えるなんていうのもありだろう。そして、そういった読者を集めたツーリング企画なんていうのも立てて、その結果もまたコンテンツに加える。また、我々がいま携わっている音楽系の雑誌であれば、電子書籍読者専用のミニコンサートを開催し、その後にそのコンサートのレポートを参観者に書いてもらい電子書籍に加えるなんていうのもありだろう。

 個人的にはこの電子の世界とリアルの融合というのが、今後の電子書籍ビジネス成功の1つのキーワードになるのではと思っているところだ。

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