ハードウェアまでスペシャルにするべきか否か
本日は、HPとMicrosoftが協業して、データウェアハウスとBIのアプライアンス製品を提供するという発表会に参加してきた。これは真っ向、Oracleとの勝負に出たのかなとも思ったのだけれど、まあ、微妙に違うところを狙っているかなとも思ったり。
今回のアプライアンス製品、データウェアハウスとBIのワークロードに特化した形で最適化しているとのこと。このあたりは、Oracle Exadataが目指している「どんな用途にも高性能を提供するDatabase Machine」というコンセプトとはちょっと違うところ。もちろん、市場でOracle Exadataとぶつかるところも多分にあるだろうけれど、むしろデータウェアハウスに特化しているTeradataであるとか、IBMが買収したNetezzaであるとかと、真っ向勝負ということになりそうだ。 彼らにとっては、また1つやっかいなライバルが出現したことに。
もう1つ異なるのは、今回HPはアプライアンス用に特別な仕様をハードウェアにとっていないということ。データウェアハウス専用のメモリ空間であるとかストレージであるとかそういうものはなく、市販されているハードウェアをカスタマイズせずにそのまま利用している。これによって、より安価に製品を提供できるとのことだ。汎用のハードウェアに汎用のソフトウェアを組み合わせたことで、とにかく分かりやすく安価なアプライアンスができたとのこと。いままでの特殊技術でブラックボックスなデータウェアハウスの世界とは、一線を画すものだと言う。さらには、MicrosoftならではのExcelという強力なユーザーインターフェイスもあり、「文系でも使いこなせる」データウェアハウス、BI環境が提供できるとMicrosoftは主張している。
本日の発表時の資料を参照すると、今回のアプライアンスでは「既存データウェアハウス製品の20%〜30%の導入費用」で同等のパフォーマンスを発揮できるとのこと。これ、Oracle Exadataの言うところの「従来の10倍〜100倍」の性能を発揮という謳い文句からするとちょっと地味目かもしれない。もちろん、HPとMicrosoftの協業体制でだって、ハードウェアに手を入れてスペシャルなデータウェアハウス専用機を作ることはできるだろう。そうすれば、「数10倍の性能発揮」なんていう謳い文句も可能だったかもしれない。とはいえ、今回はあえてそれをしなかった。そうしないことで、より安価に提供するほうに重きを置いたことになる。
このように微妙に目指しているところも違うわけで、なんとも言えない部分もあるが、結局は顧客の選択ということなるのだろう。ちなみに、今回のデータウェアハウス・アプライアンスはシェードナッシングアーキテクチャ。なので、性能を向上させてもこのままでOLTPにも対応できるものではなく、あくまでもデータウェアハウスなどの参照系に強いシステムということになる。であるからして、Oracleの言うOLTPとデータウェアハウスを1台でというようなものに、このままでは進化できないだろう。
もう1つ、今回の取り組み、Microsoft的にはHP以外のハードウェアベンダーとも同様な取り組みが可能という余地を残している。現状はHPとの強力なアライアンスがあればこそのアプライアンスなのであろうが、国産ハードウェアベンダーとも、汎用な仕組みであるので技術的には同様の取り組みはすぐにでも可能だろう。販売チャネルを増やすという意味では、強力な販売体制を築けることになるかもしれない。これは、ハードウェアをスペシャルな仕様にしなかったからこそのメリットとも言える。
Microsoftとしては、「データウェアハウス市場でプレゼンスのあるポジションをとりたい」とのことで、近いうちにシェアで2桁の獲得を目指すようだ。さて、この目標の達成ができるのかどうか。ハードウェアをスペシャルにしてより強力なアプライアンスを作るべきだったのか、否、今回のようにあくまでも汎用製品の組み合わせにこだわるべきなのか。その結果が出るまでには、もうしばらく時間がかかりそうだ。