ソフトハウスや小さなISVが、どうやってクラウドという新たな市場に参入すればいいのか
ちまたでは景気は回復しつつあると言うけれど、先月の有効求人倍率は悪化しているし、失業率も上がっているらしい。現状の景気回復は、ほんの一部の大手企業(のリストラ効果)によるものに過ぎず、中小企業には引き続き厳しい情況が続いている。
そんな厳しい情況にある弊社も、ビジネスは楽でない。これまでは受託によるシステム開発中心でそこそこ活動してきたけれど、ここは今後かなり限界感が漂う世界。単価は下がるし規模も小さくなるしで、先行き明るい兆しは見えてこない。
先行きが見えないと言っていても何も改善しないので、SaaSというかクラウドの世界に早くシフトしなきゃと、さまざまな手を打っているのが現状だ。Google AppsやGoogle AppEngineを活用したり、Amazon EC2上でも開発実績を作っていたり。さらに、力を入れているのがSalesforce.com。force.comの上にMicrosoft Accessベースで構築していたアプリケーションを移植したり、force.comのさまざまな機能や開発手順の検証なども行っている。
弊社は、技術屋集団なのでどうしても自分で触ってどうなるかを、実体験として確認してからでないとなかなか先に進めない。ということで、いろいろ触って経験するという第一段階をやっと終えた。さてこれから、なんとかこの経験を拡販するぞというところまでたどり着いたわけだ。個人的にはちょっと出遅れた感もあるけれど、ここから一気にスピードを上げ先頭集団に追いつきたい。とはいえ、いままでのシステム開発案件のチャネルでは、なかなかクラウド市場に入り込む糸口が見つけられないのも現実。とりあえずはコネや人脈を駆使し、情報収集に走り回っているのだった。
そんな折り、昨日のことだがAppExchangeコンソーシアムの会合に参加する機会を得た。このコンソーシアム、すでに1年以上前に発足したもので、Salesforce.comを起点にSaaSでビジネスを行う企業がいっしょになってSaaSの普及に努め、それとともに自分たちのビジネスも発展させ成功に導こうというもの。面白いのがコンソーシアムの運営形態で、なんとNPO法人なのだ。ベンダーがパートナー企業を集めコンソーシアムを作るというのはよくある話しだけれど、なんというか、その場合はベンダーにどうしても依存してしまいなかなか活性化しないことも多い。
ベンダーから独立した組織としては、ユーザー団体などの例はある。こちらは、ユーザーが利用している製品をより活用するための集まりであり、この場合はベンダーへの圧力団体的な位置づけになるとそれなりに活動が活発化したりもする。AppExchangeコンソーシアムも完全に独立した形での運営であり、なんといってもNPOなので設立運営の目的も米各化されており、きちんと運営が求められ当然ながら決算もきっちりと行っているはずだ。これだけでもなんというか、信用度も高く感じられる。
ところで、ソフトハウスや小さなISVにとって、SaaSというのはメリットが大きいと考えている。というのも、いままでなかなか手を出しにくかった安定した強大なプラットホームの部分は、ベンダーが責任をもって提供し運用してくれるわけで、そうなればその上で動かすものだけに集中できるから。これなら大型の案件でも、参入するのに恐れることはないだろう。
その分、SaaSやクラウドの上で、自分たちは何ができるのかをよりはっきりさせる必要も出てくる。従来、ソフトハウスなどは小回りがきくものだから、どうしても御用聞きのようになってしまい、言われたことは何でもやりますよとなりがちだ。SaaSなりのビジネスでは機能はすでにたくさん揃っているので、それらをうまく組み合わせて、足りないところだけを軽やかに構築していくことになる。そうなると、何でもやりますよではなくうちはこのあたりが得意なので、他の機能と組み合わせて一緒になって顧客の課題を解決しましょう的なアプローチが必要だろう。
このあたりの自社のクラウドでの得意技をはっきりさせるためには、先のAppExchangeコンソーシアムに参加するのはメリットがありそうだなぁと感じた次第。というのも、ここにはすでにSaaSで成功しているISVの方々がいるわけで、そのノウハウを盗ませてもらえそうだから。もちろん一方的に盗んだり模倣するというのではなく、先人の知恵を参考にして自社の得意技を確立することだけれども。そこまでいければ、それをコンソーシアムで披露して、他のコンソーシアムの方々との協業体制もできると考えたのだ。当然ながら、バックにはSalesforce.comも控えているという安心感もある。ということで、ソフトハウスやISVがSaaS、クラウドに参入するきっかけとしてはいいのかなと。