ERPなどのアプリケーションが進化する余地はまだまだありそうだなぁ
企業の目的は、当然ながら利益を上げていくこと。
ただし、この状況が少し変わりつつあるようだ。それは、企業の持続性という新たな考え方の浸透だ。先日のSAPの発表会で聞いた話だが、
- 地球環境に対する配慮
- 社会的な責任
- 経済的価値
という3つをすべて満たすことで、企業の継続性が確保される。この継続性こそが、企業価値を計る尺度になりつつあるとのことだ。
そんな情況のなかで、SAPが提供を開始したのが、企業の継続性のための指標を管理し、それをきちんと公開していくためのツールだ。
欧米では、すでにこの3つの観点から運営、経営することに重点を置き始めている企業が増えており、きちんとした情報開示も行っているとのこと。その結果として「サステナビリティレポート」なるものを、きちんと開示する企業も多い。
日本の企業もCSRレポート的なものは多くの企業が開示し始めているが、自主的に開示しているものがほとんどで、公的機関の評価を得たレポートを開示する動きはまだまだ少ない。というわけで、SAPはそのあたりをサポートするアプリケーションの提供を始めたというわけだ。このアプリケーションをすぐに利用するかどうかは別としても、サステナビリティレポートを公開する動きは今後加速すると思われる。財務諸表がしっかりしていることはもちろん、このレポートがきちんとあることが、投資の最低限の条件になっていく日も、そう遠くはないのでは。
ところで、このSAPのアプリケーションは継続性のレポートを作るコトと、そのための日常的な管理を容易にするものだ。極端に言えば、レポートを容易に作成するためのツールだ。まずはこれが必要になるのは理解できるけれど、実際に継続性のための指標にもとづき、継続性の高い企業オペレーションを実行するにはどうすればいいのだろうか。
たとえば、自社の継続性のための1つの指標として、年間の水消費をこれだけに抑えると決めたときに、結果として今これだけ使っているというのはこのツールで管理できる。それでは、年度末までにもう少し水の使用量を落とさなければ目標達成しない状況が見えた際にどうするのか。現状なら、関係部署にそういう状況にあることを伝え、現場でなるべく水を使わない部品なりを調達するよううながすことになる。
これをもう一歩進めるなら、調達のアプリケーションに価格や納期以外に、水の使用量やCO2の排出量といった継続性のための指標も設定できるようにする。そして、それら指標も合わせて、調達の判断を下せるようにすることだ。ここまでできれば、最初に示した継続のための3つの条件を満たすための、具体的な業務オペレーションがすぐにでも実現できるだろう。
SAPの発表会で、このあたりまでSAPではすでに進めているのかといった質問をしてみたけれど、現状ではさすがにそこまですぐにできる環境にはないようだ。ただし、今回発表のこのレポート、管理のツールと業務オペレーションのためのERPの間に、別途すでにあるCO2排出量管理のアプリケーションや環境インパクトを管理するアプリケーションを置いて、それらを組み合わせることで実現していくことになるとのことだった。
ERPなどのアプリケーション製品なんてもう枯れた領域であり、今後はそれほど進化するところはないのかなと思っていたけれど、どうやらまだまだ進化する余地はありそうだ。というよりは、こういった部分での進化が、次なる製品選択のポイントになってくるのかもしれない。