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鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

スマートな地球を作るというのはよくわからないけれど、スマートなコンピュータは作る

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 米国時間の11日日曜日の夕方、正式なオープニングを明日に控え、いつもなら軽くてちょっとエンターテイメント性の高いステージが行われるOracle OpenWorldの日曜日の夕方。今年は、のっけからCEOラリー・エリソンにSunのスコット・マクネリという注目の2人が登場し、多いに盛り上がるキーノートが行われた。

 キーノート会場に降りるエスカレータの正面にある、メインの展示スペースには、Sunのハードウェアによる新しいExadata V2が5台連なっている。

 今日はSUNdayということで、日曜日とSunをかけている。まずは、若い頃のさまざまな写真や映像が大きなスクリーンに投影され、スコット・マクネリ氏が登壇、かなりノリノリの雰囲気で27年のSunのイノベーションの歴史を、おもしろおかしく振り返った。

 PC上のNFSや、Open Source Softwareへの貢献、SPARCやSolarisなど、マクネリ氏が認めている10のイノベーションが紹介された。なかでも、シンクライアントのSun Rayは、氏のお気に入りのものだとのこと。これらのイノベーションは、今後も生き続ける技術だと指摘した。

 イノベーションというものは、顧客に価値を生まなければならないとマクネリ氏は言う。そのイノベーションを、SunはOracleとの融合後も続けられるのかと自問し、続いてこの問いに答えていった。SPARCチップ、Solarisにも引き続き投資を行う。Oracleは、Solarisについては、Sunがこれまで使ってきた以上の投資を行って今後も開発を続けるとのことだ。

 MySQLについてはどうか。マクネリ氏は、なくなるとは思っていないと言う。Oracle DatabaseとMySQLは競合していないという認識であり、むしろSQL Server、DB2とは競合する製品であると言う。OracleはInnoDBというMySQLのエンジンの1つでもある技術をすでに買収しており、それについては引き続き製品を提供し成功している実績もある。「MySQLについて、不安がる必要はない。万が一OracleがMySQLへの投資を辞めるようなことがあっても、GPLのもとにこの技術を使い続けることはできる」とマクネリ氏は指摘した。

 Javaについては、Javaの父である、ジェームス・ゴズリング氏をステージに招いて話をした。ゴズリング氏は、すでにOracleがJavaの世界でさまざまな貢献をしていると指摘。マクネリ氏が「これからOracleがJavaの中心になるけれどどうだろうか?」と訊ねると、「ぜんぜん心配していない」とゴズリング氏は応える。

 さらに今後もSunのイノベーションは続くことをさらに信用してもらうために、ステージにはラリー・エリソン氏が登壇。SolarisにもSPARCにも、さらなる投資をすると断言する。「SPARCはもっとも優れたアーキテクチャを持っている」ともエリソン氏は言うのだ。さらに、Exadata V2でも採用しているフラッシュメモリの技術を取り上げ、「フラッシュは速いだけでなく、電力も使わない地球に優しいものだ」とも指摘した。

 そして、エリソン氏からも、MySQLの今後について言及があった。「MySQLとOracleの市場は競合していない。MySQLには、今後もさらに投資をしていく」との発言があり、会場からは大きな拍手が巻き起こった。

 エリソン氏は、Sunとの融合のメリットについて、Appleを引き合いに出した。Appleはハードウェアとソフトウェアを1社でコントロールすることで成功している。OracleとSunの融合も、同様なメリットが創出できるはずだと言うのだ。

 ここから、TPC-CベンチマークによるIBMのハードウェアとの比較が始まる。IBMのハードとDB2との組合せと比べ、SunとOracleの組合せは性能がはるかに高いと言う。まず圧倒的にサーバーの数が少なくても、高い性能が出るのだとのこと。Sunの9ラックに対して、IBMは76台ものマシンを並べないとならないが、そこまで数を増やしてもフォルトトレラントではない。さらに、台数も多いので、当然ながらスペースも電力消費も多いと指摘する。IBMの"Power"というプロセッサの名前は、電力をたくさん使うという意味なのだとの皮肉も飛び出す次第だ。

 IBMは"Smart Planet"というコンセプトを打ち出しているが、これに対し「スマートな地球を作るというのはよくわからないけれど、OracleとSunはスマートなコンピュータを作る」とエリソン氏は言う。エリソン氏はSunとOracleの組合せで、IBMに立ち向かっていけるようになるとも発言、これに対しても会場からは大きな拍手が起こった。

 再び登壇したマクネリ氏は、「Sunの役員も株主も、正しい決断をした」と言う。これからのITの未来にも、エキサイティングな選択だとも。極めてたくさんの人が、このマクネリ氏とエリソン氏の講演を聞きに会場に足を運んでいた。Sunのマシンを買うかどうかに関わらず、Sunというベンダーに対する関心はまだまだかなり高いものがあり、SunとOracleの融合に大きな期待が寄せられていることが、あらためてうかがわれる。マクネリ氏の、大きな肩の荷が下りちょっと晴れがましい表情が、そして、ある意味で新しいおもちゃを与えられ嬉々として喜んでいるようなエリソン氏のプレゼンテーションが、極めて印象的なステージだった。

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