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鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

景気後退局面で増える物

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 不況である。大手ITベンダーからは、四半期決算が発表されているけれど、直近は概ね好調でも先行きは不透明。業績の予測は、当然ながらかなり弱気含みだ。

 で、そんな厳しい状況の中でも増える物はいったいなんなのか、失業率や借金ではなく、オープンソースデータベースだという記事が掲載されていた。

 コスト抑えるためなら有償の商用データベースじゃなくてオープンソースデータベースをって話。実際にどこまで仕様が伸びるかはわからないが、これだけ厳しそうな景気状況だと、見積書のOracleってところを、とりあえずPostgreSQLやMySQLに書き換えてみたくなる人も多いのでは。

 弊社が関わっている開発案件では、オープンソースデータベースでも十分に対応できるというものが少なくない。プログラムの処理の中で、排他制御がきちんとできるリポジトリ的に使うだけなら、高価な商用データベースでなくてもなんとかなる。もちろん、長く使う、大勢で使う、たくさんのデータを格納する、格別なセキュリティ確保やアクセスコントロールを行いたい、という要望があれば話は別。

 まったくの新規案件なら、自分たちがデータベースに何を望んでいるかを改めて見直してみると、なんだMySQLでもいいんじゃん、てなことになるかもしれない。とはいえ、そうしたからといって、TCOの削減となるかはまた別の問題。景気後退局面での対処療法であれば、導入時のライセンスが無償というのは確かに貢献はするかもしれないけど。

 記事にもあるが、いま商用データベースを利用していて、それをオープンソースデータベースに移行するというのは、かなりじっくり検討してからにしたほうがよさそうだ。ライセンスコストは削減できても、移行の手間でその分が相殺されてしまうかもしれないのだ。

 多くの場合、商用のほうがオープンソースのものよりリッチな機能を持っている。そのため、オープンソースにある機能が、商用でそれに相当するものがないということは滅多にない。が、逆は大いにあり得るのだ。Oracleなら、SQLのちょっとした記述だけで実現できることが、MySQLでは別途外だしプログラムを作らないと実現できないかもしれない。

 Oracleなりの機能を便利に使いこなしていればいるほど、オープンソースデータベースへの移行は、やっかないものになりかねない。記事にもあるとおり、景気後退はオープンソースの無償製品には追い風であることは間違いないが、それで劇的に市場シェア状況が変わることはなさそうだ。ただし、これまでのように、どうせ買うならいいものを、余裕のあるものを買っておきましょうというわけにはいかない。ユーザーサイドは、自分たちにとって本当になにが必要かを見極める目は、早急に養ったほうが良さそうだ。

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