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戦略的なCSR考える時代に

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 9月2日、セールスフォース・ドットコムが大きなイベントを開催した。3300名もの申し込みがあったということで、同社にとっては米国以外では最大のイベントであり、これまで日本で最大規模だったものの倍の規模に膨れあがったとのこと。

 この規模感には、SaaSへの関心の高まりがいよいよもって本物になりつつあるというのを実感させられる。基調講演については継続的にセールスフォースを追いかけていることもあってか、それほど目新しいものはなかったような気がした。とはいえ、世界中の成功事例は確実に増えていることは間違いなさそうだ。

 目新しいといえば、モバイル端末が確実にエンタープライズITの世界で、ユーザーインターフェイスを担う役割になってきていること。それを実感させられるデモが行われた。セールスフォースでは、すでにGoogleのAndroid携帯もターゲットに入っており、エミュレータを使ったデモがいち早く紹介されていた。

 午前中の基調講演のあと、会場を移してCSR(Corporate Social Responsibility)に関するパネルセッションが行われた。こちらは、日経新聞の関口和一氏をモデレータに、NPO関連の研究活動をされている法政大学の中村陽一教授や企業のCSR担当者、NPOの代表らが参加した。パネルディスカッションの詳細にはここでは触れないが、なかなか興味深いものだった。とくに「戦略的なCSR」を考える時代になったといったあたり。

 従来、企業は本業でもうけて、余力で社会貢献するというのが普通だったが、いまではそれはそれでおおいにやるべきことだが、より戦略的にCSRや社会貢献の活動をとらえる時代になりつつあるという。というよりも、社会貢献の活動を本業の付録と位置づけているようでは、CSRはむしろ成り立たなくなってきているという。企業の活動そのものの中で、社会貢献を実施していくような考え方が必要になっているのだ。

 たとえば、自社の製品なりサービスなりを無償で社会貢献活動に活用してもらう。これ自体は社会貢献として評価されるし、こういった活動そのものがその会社のブランディングの向上、企業の格付けに結びついていく。さらに戦略的に考えるならば、自社だけで製品のマーケティングをすればコストが大きくかかるが、一部を社会貢献に回すことで、たとえばNPO経由で製品やサービスがPRされる。そういったことも1つのCSRとして、企業の活動の中に組み込んでいく時代になっているのだ。

 なんだか売名行為的ととられそうだけれども、逆に考えればそういった活動を企業の仕組みとして組み込むことで、企業側には暗黙の責任が生まれ継続的な活動に繋がるのだと考えられる。たんなる無償奉仕では、継続性や責任感の部分はかなりあやふやで希薄だ。むしろ、そういったことを継続的な仕組みとして企業は取り入れて初めて、社会貢献と呼べるものになるのだろう。

 これからは、企業はポジティブに「戦略的な社会貢献、CSR」を考える時代に突入しているのだ。さて経営者の端くれとして、零細企業の弊社ではどんなことができるのか、ちょっと考えてみたいと思うのだった。


  • タイトル:世界を変えるビジネス―戦略的な社会貢献活動を実践する20人の経営者たち
  • Review type:product
  • 評価:4/5
  • 評価をした日:2008-09-04
  • 著者:マーク・ベニオフ (著), カーリー・アドラー (著), 齊藤 英孝 (翻訳)
  • 出版社:ダイヤモンド社
  • ISBN:ISBN978-4-478-00594-1
  • 価格:1,800円+税
  • 詳細:セールスフォース・ドットコムのCEOであるマーク・ベニオフ氏が著者の1人である書籍。世界で社会貢献を実践する経営者がどういった取り組みをしているかを綴ったものだ。企業は社会に生かされている存在であるならば、企業と社会はどのような関係を築いていけばいいのか。書籍では、大手企業の例がもちろん多いのだけれど、まだ詳細には読んでいないが、ここには小さな企業でも社会貢献をどのように捉え、どう実践すればいいのかのヒントが含まれている。

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