エンタープライズ系ソフトウェアはタダになる!?
オラクルのカスタマーサービスの新戦略に関する、記者向けブリーフィングに参加した。買収したPeople SoftやSiebelの製品を含め、顧客にとってワンストップでのサポートサービスを提供できる体制を実現していくとのことだ。
今日の発表のなかで、オラクルにおけるサポート関連とライセンス販売のビジネスの割合についての話があった。昨年度、日本においてはライセンス販売が53%、アップデートおよびサポートが47%でライセンス販売がまだ多い。しかしながら、米国オラクルコーポレーションの場合は、ライセンス49%、サポート59%とサポートビジネスが6割近くにまで増えているとのこと。
この話を聞いて、このままいけばオラクルのようなエンタープライズ系のソフトウェアは、ゆくゆくはタダになるのだろうなと思った次第。なんだか発想が、飛躍しているように思われるかもしれない。
SaaSが普及して、エンタープライズ系ソフトウェアの価格破壊が起こるとかそういった理由ではない。もちろん、SaaSが普及すれば、淘汰されるソフトウェアもあるかもしれない。そのために、さらなるソフトウェアの低価格化というのもありえるだろう。しかしながら、私が思いついたのは、いわゆる"Subscribe"型ビジネスの普及により、ソフトウェアの初期導入コストが極めて安くなり、ものによってはタダにすらなりかねないという発想だ。
オラクルの例でも、すでにワールドワイドではライセンス、つまりは導入時に購入費として支払われているものよりも、継続的にソフトウェアを使い続けることに対して支払われるビジネスのほうが、規模が大きくなっている。この傾向がさらに伸びるのであれば、これは、まさに携帯電話端末販売のビジネスと同様、買うときは1円でその後は基本料金および通話料という形で継続的に対価を支払うシステムと同じだ。
すでにRed HatなどのLinux OSのビジネスは、この形をとっているといえる。マイクロソフトでさえも、契約によっては似たような費用の発生の仕方をするものもある。継続的に顧客から収入があるのなら、導入時の費用は限りなくゼロに近づけてもベンダーの商売としては成り立つことになる。
しかしながら、このビジネスモデル、すでにインストールベースがたくさんある企業でなければなかなか成り立つものではない。従来、これらはライセンス販売の後ろで密かに営まれるビジネスだったが、今後は体力のある企業がシェア獲得のために極端な導入時費用の割引キャンペーンを実施するといった、表の戦略として出現してくるかもしれない。
SaaSの今後の発展とともに、ソフトウェア業界においてこの"Subscribe"型のビジネスモデルが公に普及してくるのではないだろうか。企業によっては、この継続的に費用が発生するモデルを嫌い、自社の資産としてソフトウェアを全部買い取り、あとはバグフィックスだけきちんとしてくれればいいというところもあるだろう。さすがにこの場合は、ライセンス料をタダにするわけにはいかない。
タダとまでいかずとも、たとえば5年間契約してくれるのなら、導入時は格安なんていうライセンスモデルが出てきそうな気はする。とはいえ、タダより高いものはない。ソフトウェアの真なる価値に対する費用の発生について、今後どのように考えていけばいいのだろうか。近々、業界内外でこの件は課題となりそうな気がしてくる。