コグノスの可能性
BI専業のツールベンダーとして名高いコグノスが、最新バージョンのCOGNOS 8のラウンチイベントを開催した。そのうちITmediaの記事としてレポートが掲載されることと思うが、いくつかのセッションに参加して感じたことを書いておく。
BI自体は、すでに15年くらい前からあるITの概念だ。当時は、経営者向けの「数字を見るための」仕組みとして登場した。これはレポーティング・ツールであり、Excelでグラフにしたり表の重要なところに色をつけたようなイメージだ。これがOLAPと呼ばれるオンライン分析へと発展し、データウェアハウスと連携する。さらにウェブベースの仕組みになり、利用者も特定の分析を生業にする人々から、現場のあらゆる部門へと拡大する。
そして現状は、ポータル画面になりユーザーごとにパーソナライズされ、ダッシュボードやスコアカードなどの機能も取り入れ、コグノスの言葉でいうならばプラットフォームへと進化している。COGNOS 8ではRSSでプッシュ型の情報発信も組み込まれるということで、最新の技術も取り込んでいる。
たんなるレポートの時代は、現状を把握するものでしかなかった。イベントの最後におこなわれた、おなじみのブロガーである栗原さんとITRの内山さんのアナリストバトルの第二段でも語られていたが、現状では今を知るだけではだめでそこからの対処法、アクションにいかに連繋させるか。これができるシステムでなければ、次世代のBIツールとは言えないだろう。
COGNOS 8は、そんな製品だという。COGNOS 8を使って、どこまでが自動的に実現でき、どのあたりを作りこむ必要があるかはユーザーの環境によって異なる。今日のセッションに参加するまで、BIシステムとしてはオラクルやSAPなどのERPベンダーが有利だと思っていた。というのも、ERPがあれば企業内のプロセスを把握でき、そのプロセスごとに必要なレポートをタイムリーに提供できる。そのため、上記のアクションを含めたサイクルを実現しやすいと考えていたからだ。
ところが、実際の現場ではさまざまなシステムが混在する。これを緩やかに統合していくというのが、現状のERPの流れだ。となると、自社のERP環境だけではトータルなBIを実現できないし、たとえレポート画面は作れてもアクションに結びつける仕組みは、結局はカスタムで作らざる得ない。そうであれば条件はほぼ互角、コグノスにもチャンスは出てくる。BIを機軸にした連繋を考えるならば、BI専業ベンダーの経験値という優位性が活かせそうだ。
コグノスのBIツールの機能性は、専業だけありさすがに高い。ただし、ツールの性能をアピールするだけでは、ユーザーの心にはそうそう響くものではない。今回のイベント中にもときどきに登場した「日本版SOX法」への対応でどのように利用するかとか、上記の分析からアクションまで含むサイクルを企業パフォーマンスの向上にどのように利用するかといった、「具体的方法」が見えてくると理解しやすい。まだまだ「BIのツール」ベンダーというイメージの強いコグノスが、「BIのソリューションベンダー」としてリードしていければ勝機はありそうだ。