オルタナティブ・ブログ > むささびの視線 >

鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

10年後にSIerはどんな仕事をしているのか

»

 もうだいぶ時間が経ってしまった感はあるが、先日の栗原さんとITRの内山さんのアナリストバトルのときに感じたことについて書いておきたい。個人的に、ここ最近ずっと気になっていた話題の1つだ。このときのバトルのタイトルは「今後重要になる最新ITトレンド」で、トピックスとして「ユーティリティ・コンピュータ」「ユビキタス」「SOA」「RFID」の4つをとりあげた。気になったのは、そのなかのSOAについてだ。

 私が気になっているのは、SOAの技術的なことではない。このときに内山さんがエンタープライズ・アプリケーション分野の仮説としてとりあげた、「いくつかのアプリケーション分野でオンデマンド化が進む」という内容についてだ。内山さんから、Salesforce.comやSiebel CRM Ondemandのように、いわゆるオンデマンド(Application Service Provider)型のサービスの成功事例が解説され、さらに、Forrester Researchのレポートをもとに、ユーティリティ課金モデルの普及予測が伝えられた。このレポートによると、2010年以降には、20~30%の割合で新規システムにおいてユーティリティ課金形態が採用されるとのこと。すでに実績の出始めたCRM、ERP分野、DBやAPサーバーなどのインフラサービスを皮切りに、オフィス用のツールにもその範囲は拡大することが予測されている。

 さて、そのような時代になったときに、SIerはいったいどんな仕事をしているのだろうか。オンデマンドのサービスでは、おそらく簡単なカスタマイズが発生するのでそれを実施、オンデマンドサービス化しにくい企業固有業務を対象にしたアプリケーションの開発、などが考えられる。しかしながら、オンデマンド型の普及に反比例するように、大勢のSIerが直接実施するようなシステム開発案件は減少していくだろう。栗原さんからは、その時代になっても企業の競争力を維持するような分野ではカスタムアプリケーション開発のニーズはなくならないことが指摘されていた。とはいえ、いくつかのSIerが淘汰される可能性も示唆された。

 実際、オンデマンド型のサービスは月額1人数千円から利用でき、すぐ使えていつでも辞めるられる。サーバーは集約的に専門家によって管理されるので、セキュリティに関しても一定レベルの安全性は確保できる。同様なシステムをSIerに頼んで開発すれば、規模にもよるが、数千万円から億単位の費用が発生するだろう(ソフトウェアのライセンスからハードウェア、開発費用含め)。オンデマンド型のシステムの利用では、SIerが介入する余地はほとんどない。

 さらに、現状オフショア開発にはまだ問題はあるが、標準化開発手法などがもっと普及していけば10年後はあたりまえの状況となっている可能性も高い。今後、国内で大所帯のSIerとしてやっていくのは、かなり厳しい状況がありそうだ。その下にぶらさがっているソフトハウスも含め、淘汰される時代が確実にやってきそうな気がする。そのころの状況を予測して、いまから開発系の会社は変化しなければならないだろう。企業として、利益の源泉をどこにもっていくのか。そして、自社の核となる売り物はなんなのか。もちろん技術力は大事だが、数年後の「システムの姿」をきちんと予測して、自らの方向性を決める必要性がある。日本では、オンデマンド型サービスの大成功企業というのはまだない。この先、国産のSIerが、開発から大きくオンデマンド型のサービスに舵を切るなんてこともおこりそうな気がする。

Comment(0)