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すぐれたドメインたち

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DNJournal が毎週発行しているドメイン名取引情報の 2012/3/14 版によれば、lab.org というドメインが $12,500 で取引されました。このドメインを購入されたのはロフトワークを運営されている諏訪光洋さんです。このブログでも取り上げてきましたが、日本では(少なくとも表向きは)良質のドメインを使うということに対する意識が希薄であり、まして良質のドメインを買ってまで使おうとする例が稀有な中で喜ばしい動きでした。

かつて、「Web 2.0」がもてはやされていた頃、ドメイン名への投機は古い(Web 1.0)ものだとされました。しかし、世界的には、この頃から良質のドメインというものがますます重視されていました。サブプライムローンからはじまった世界不況のあおりを受けて、ドメインの取引価格も下落したのは事実ですが、良質のドメインの需要が続いていることに変わりはありません。

lab.org を購入された諏訪さんは、

…日本の最近スタートアップ、ドメインが適当なのが(jpだったりハイフン入ってたり)僕には信じられません。
https://twitter.com/#!/suwaws/status/178056280596938752

とコメントされています。とくにネットで新たなビジネスを始めるときには、ドメイン名にも十分に配慮すべきです。ドメイン名の取引価格までわかっている例は、ほとんどないのですが、日本で使われている良質のドメインについていくつか紹介します。

Pict142a_2chance.com(チャンスイット)

私がドメインに興味を持ち始めた頃に取引されたもので、チャンスイットという懸賞サイトが購入しました。プレスリリースにも出ていますが、当初は chance-it.com というドメインを使っていました。その後、米国在住の個人が所有していた chance.com を8万ドル(当時で約1000万円)で購入したもので、懸賞サイトとしてのブランディングに成功した例だといえます。ポピュラーな英単語の.comは「ワンワード.comドメイン」として、大変貴重がられるものです。当時は、750万ドルで取引された business.com を契機にしたドメイン名バブルがはじけた頃でもあり、こうしたドメインが比較的安価に買えることも多かった時期でしたが、十分にリーズナブルな取引だと言えます。

Pict142bhatena.com(はてな)

「はてな」は日本では hatena.ne.jp というドメインを使っていますが、米国に進出する際に hatena.com を購入しました。日本語のローマ字読みドメインは、日本限定となるため英単語に比べれば需要は限定されますが、覚えやすく良いドメインであることに変わりはありません。このドメインの場合、取引自体が公表されているわけではありませんが、元所有者がドメイン名をなかなか手放さないことで知られていた Ultimate Search だったので、それなりに高額の取引だったことが伺われます。「はてな」の米国進出そのものは、成功事例とは言い難いところですが、ブランディングにおいてドメイン名の重要性が考慮されていたということです。

Pict142ckakaku.com(価格コム)

さまざまな製品やサービスの価格情報を提供する老舗のサイトとして知られています。これもローマ字読みドメインですがドメイン取引で取得したものではなく、ドメインバブルが始まる前の1998年に自ら登録したものです。まだ、ネットビジネスの先駆者として朝日新聞の記事で取り上げられていたのを読んだ覚えがあり、おそらくその頃から急速に一般への認知が広まっていったのでしょう。その際、“カカクコム”と素直に読めるドメインを使っていたことが、ネット上でのブランディングの成功につながったことは間違いありません。

Pict142dDMM.com(デジタルメディアマート)

“英字3文字”は、さまざまな場面で使えるため、どんな組み合わせであってもそれなりの人気があります。とくに“.com”ドメインは失効することはまれで、最低でも数千ドル程度の取引になります。DMM.com についても取引は公開されていませんが、whois の履歴を調べると前所有者から移管されたのは2002年頃です。この頃、安いものは数百ドル程度で取引されたものもありますが、「DMM」という並びは使い勝手がよいので、相応の対価が支払われたものと推察されます。今では「♪ディーエムエム、ドットコム」というコマーシャルで知られていますが、覚えやすいブランド名として定着しています。

Pict142ehirano.com(平野洋一郎氏の個人ブログ)

オルタナティブブロガーでもある平野洋一郎氏の個人ブログ(ここでの更新は休止されており、ご自身の運営する会社で継続されています)。“良質なドメイン”といっても、新たなビジネスの名称を決めるのであれば、さまざまな選択肢があります。しかし、苗字はひとつしかないため、「ほかのドメイン」という選択肢がありません(しかたなく、“~family.com”といった組み合わせから探す例はあります)。“平野”は苗字ランキングとしても100以内に入るであろうもので大変人気がありそうですが、平野氏はインターネット黎明期の1996年にこのドメインを登録して以来、使い続けられています。

良質のドメインは、必ずしもビジネスの成功を約束してくれるものではありませんが、ビジネスにおいて適切なマーケティングや広報活動が重要なのと同じように、とくにネットビジネスの入り口となるドメインも重要だということです。現在、chiiku.com というドメインが $2,400 で取引が成立し、移管処理中のようです。「知育サイト」として運営されることに期待したいと思います。

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