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営業は終わった(1)会ってもらえる理由が消えた

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「営業は終わった。いつまでこんな仕事にしがみついているのか。」

私がそう書いたのは、2018年のことでした。あのときは、警鐘のつもりでした。このままではいけない、変わらなければならない、という呼びかけでした。いまは、そうではありません。変わらなければ終わる、ではなく、変わらなければ終わらされる。そういう段階に入りました。

ただし、誤解のないように申し上げておきます。終わりつつある営業は、確かにあります。しかしそれは、営業という仕事そのものではなく、営業という仕事の「ある部分」です。どの部分が終わり、どの部分が残るのか。それを見極めないまま不安だけを語っても、何も変わりません。

この連載では、三回にわたってこれを考えます。第一回は、何が終わるのか。第二回は、何が残るのか。第三回は、残ったものをどう生きるのか、です。

まずは、営業の内側から離れて、社会と企業に何が起きているのかから始めます。営業が変わらなければならない理由は、営業の心構えの問題ではなく、営業が立っていた地面のほうが動いたからです。

社会に何が起きているか

三つの変化が、同時に進んでいます。

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第一に、情報の非対称性が消えていきます。 製品の知識、他社の事例、業界の動向、技術の潮流。これまで、お客様が持っていない情報を持っていることが、専門家の立場を支えてきました。しかしその情報はすべて「普遍」です。誰にでも共有でき、他者に移転でき、教科書に書ける。だからこそ、機械にも移せます。膨大な知識を横断し、整理し、比較する仕事において、AIはすでに並の専門家を超えています。

第二に、つくるコストが劇的に下がります。 コードを書く、資料をまとめる、設計を起こす、分析する。これまで時間と人手を必要とした実行の工程が、次々に安くなっていきます。実行が希少ではなくなるということです。

第三に、その結果として、希少になるものが移動します。 何をつくるのか。なぜそれをやるのか。うまくいかなかったとき、誰が結果を引き受けるのか。つくれることではなく、決めることと背負うことのほうに、価値の重心が移ります。

企業に何が起きるか

この三つは、企業の行動を具体的に変えていきます。

調達のかたちが変わります。 仕様の定まった調達は、いずれ機械同士のやり取りになります。要件を整理し、候補を探し、比較し、条件を詰める。この一連の作業は、買い手側のAIエージェントが担うようになります。人間が伝票を運ぶ理由がありません。

業務プロセスの前提が崩れます。 いまの業務プロセスの大半は、人間が作業することを前提に設計されています。その前提が外れれば、効率化ではなく、組み替えが必要になります。ここに手をつけない限り、AIを入れても業績は変わりません。

収益構造が動きます。 物販や工数で収益を拡大することは、すでに難しくなっています。AIによる開発の自動化は、この流れに拍車をかけます。売るものがなくなっていく、ということです。

そして、外部に求めるものが変わります。 供給してくれる相手ではなく、構想し、共に走ってくれる相手を探すようになります。前者はもう、自前とAIで足ります。

だから、営業は何を失うのか

ここまでの変化を営業の側に引き寄せると、失われるものが順番に見えてきます。

まず、御用聞きが消えます。 仕様が決まっているものを届ける役割は、機械同士のやり取りに置き換わります。会ってもらえる理由がなくなる、ということです。

次に、課題解決型の営業も安泰ではありません。 課題が言語化されてさえいれば、解の探索はAIのほうが速く、広く、網羅的です。「お客様の課題を聞いて、最適な解決策をご提案します」という営業は、その仕事をお客様自身がAIとできるようになった瞬間に、立場を失います。

そして、ここからが本題です。 あるべき姿を描くことすら、かなりの程度までAIができます。お客様の経営理念と、置かれた状況と、直面する課題を突き合わせて、理想の像を構想する。この作業は、情報の網羅性と論理の整合性の勝負です。つまり、これもまた普遍の領域なのです。

営業の仕事のうち、これまで最も知的だと思われてきた部分までが、機械に寄せられていきます。これを認めるところから始めなければ、この先の議論は甘くなります。

にもかかわらず、何が起きているか

これだけの変化が進んでいるのに、多くの現場で起きているのは、既存の営業プロセスにAIを差し込むことです。訪問件数を増やす。提案書を早く仕上げる。日報を自動で書く。

しかし、考えてみてください。売り方そのものが役割を失いつつあるときに、その売り方を高速化して、何になるのでしょうか。それは、時代遅れの仕組みを、より効率よく回すための投資にすぎません。

そして厄介なことに、当事者にその自覚がありません。営業とはかくあるべしという刷り込みから抜け出せず、それがお客様のため、会社のためだと思い込んでいます。自分の考えを変えるよりも、世の中の常識を自分に都合よく調整するほうが楽だからです。

組織ぐるみで、この現実と向き合うことを避けている場合もあります。これではいけないと思っても、口に出すことがタブーとされる空気。意見を求める経営者も、聞くだけで動かない。そして現場は「だからウチはダメなんだ」と愚痴る。この構図は、私が2018年に見たものと変わっていません。変わったのは、猶予の残量だけです。

終わったのは、営業ではない

ここまでを整理します。

営業の価値は、長いあいだ、二つのものに支えられてきました。ひとつは、情報の非対称性。もうひとつは、供給の希少性です。知っていることと、届けられることが、会ってもらえる理由でした。

その両方が、いま同時に失われつつあります。

つまり、終わったのは営業という仕事ではありません。営業という仕事を成り立たせる前提のほうが、終わったのです。 前提が消えたのに、その上に建てた仕事のかたちだけを守ろうとするから、腐臭が漂います。

では、前提が消えたあとに、何が残るのでしょうか。

次回は、営業の仕事を工程に分解し、どこがAIに移り、どこが人間に残るのかを、ひとつずつ仕分けていきます。

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