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知的財産を否定して、利するのは誰か

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いやー、こんなところでエントリ書いてる場合じゃないわけですが(書かなかったからなんだというわけでもないですが)、そろそろ、このシリーズも終わりたいところですので、今日もまたエントリを書きます。

著作権をはじめとする、いわゆる知的財産権が、厳しければ厳しいほどよいということはないわけですが、一方で、そもそも権利として疑わしいのだという主張があります。知的財産権を弱め、あるいは否定すると何が起きるでしょうか。

たとえば、保護期間の切れた著作物は自由に利用できます。青空文庫という素晴らしいサイトには、著作権切れの本がたくさんあり、古い作品を無料で楽しむことができます(保護期間内の自主的な登録もあるようです)。また、ここに置かれている作品は、ダイソーで100円文庫として売られたり、Nintendo DS の『DS文学全集』に利用されているのだそうです。パソコンのままで読みにくいと思っても、このように入手しやすい形になることで、文学作品を楽しむ敷居が下がるのは喜ばしいことです。また、最近では著作権切れの映画DVDも安価に売られています(色々争いはあるにせよ^_^;)。今や DVD の製造コストはケース込みで100円くらいと思われますから、オリジナルさえ入手できれば、売価が300円や500円でも十分元が取れるということのようです。

さて、(皮肉ではなく)これらの作品で利益を得ているのは、はしょった言い方をすれば書籍や DVD を作る製造業者であり、著作者(あるいは遺族)ではありません。たしかに、読者にとっては喜ばしいことだと思いますが、これによって著作者側への支払いはありません。文学作品の場合、作者の死後50年までは保護期間がありますから、その期間中に対価を得ることはできますが、もし著作権がいきなり否定されてしまったら、それが困難になることは容易に想像できます。

著作物を公開してアフィリエイトで稼ぐ、という提案もあります。執筆や制作にかかる費用が少なければ可能かもしれませんが、そういうものばかりではありません。文学作品だって、海外への取材が必要なこともあるでしょう。音楽の場合、スタジオを借りて、ちゃんとした演奏家に演奏してもらおうとすると、それなりの費用がかかるでしょう。ちょうど、小飼弾氏が自身の1月のアフィリエイト実績を公開されていたのですが、「先月の倍で60万円」だそうです。趣味のブログで得られる収入としてはたしかに大きいのですが、アルファブロガーと呼ばれる小飼氏ですらこの金額だとすると、上記のようなことをビジネスとして運営するのは難しそうです。

あるいは、特許についても、特許権が認められず使用に対価が必要ない(あるいはわずかな額で使用できる)ということになれば、それを大量に利用する仕組みを持つ大企業の方が有利になるでしょう。小規模な企業がすぐれた技術を発明したところで、生産コストで太刀打ちできなければ生き残ることは難しくなります。結局、知的財産権を否定して有利になるのは、大企業だけだということになります。

企業とか団体の利権を糾弾したいあまり、知的財産権を否定しようとする意見が見られるのですが、それによって利するのは、結局(別の)企業であり、作家や発明家ではないでしょう。むしろ、「レコード会社とアーティストは対立しているのか」に書いたとおり、これらの人々は自分の属する(あるいは契約する)会社や企業が利益を生み出すほうがよいと考えているでしょう。知的財産権は厳しければよいわけではないのと同じように、緩ければよいというわけでもないはずです。極論に走らず、まずはバランスを考えるようにしたいものです。

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