書評いろいろ その1 真空管回路の基礎のキソ 米田 聡 著
今回は、真空管回路の基礎のキソ 米田 聡 著 を読む機会がありましたので、柄に無く、書評などしてみようと思います。
私は元来ハードウェア技術者として始めて会社で働いた経緯から、ハードウェアの基礎がいかに重要かを身を持って知っているつもりです。
多くの方がコンピュータを使えても、その原理をどこまで知っているのか、私は不安でなりません。
コンピュータのチップも同じです。最終的には、半導体の原理、そして、それ以前のテクノロジーのリレーや真空管に行き着きます。
もちろん、知らなくても何ら困りませんし、それが普通なのかもしれません。
でも、私は個人として、技術者は、技術の背景を知るべきだと思います。
それが実際の仕事に何ら意味が無くとも、その知識は、開発、作成する製品に何らかの影響を及ぼすと信じているからです。
私は、幼い頃から回路が好きで、小学生でテレビをばらし感電し、両親にとても叱られた覚えがあります。高校生の頃は、ギターのエフェクターやアンプをいじって、軽い感電など普通にしていました。
そんな私にとって、この本はとても懐かしい本に思えます。
著者のスタイルなのでしょう。難しい事をできるだけ簡単に説明しようとしています。
そして、イラスト付きのとても親しみやすい内容です。
半導体がどこまで行ってもブラックボックスな側面は、量子力学の知識がなければ解明できませんが、真空管は、中学生の知識でも根本原理から理解できるとても良い教材だと思います。
この本は、初心者向けに書かれていて、高度な真空管回路までは触れていません。
また、半導体回路との根本的違いは書かれているものの、半導体回路との違いを明確に区別できるだけの細部の説明が不足しているように思えます。
でも入門書としては最適でしょう。細部まで説明があれば初心者なら必ず本を置く可能性が高いからです。
途中に書かれたコラムが頭が固まる事を少し緩めてくれる感じで、一気に読んでしまいました。
読破時間2時間ぐらいでした。
とても良い本です。そして、判りやすくて取っ付き易い本です。
でも一度読んだらそれでおしまいです。何度も読み返すほどの内容は残念ながらありません。
あくまでも入門書として、詳しい回路の本の繋ぎ役としての役目は十分で、この点を納得するならばとても良い買い物ではないでしょうか。
この本を読み、真空管回路に興味を持ち、半導体回路をもう一度勉強し直し、半導体回路の良い点、悪い点を踏まえた知識を持った技術者が育つことを切に願うものです。
今日はここまで、またいつか御会いしましょう。