<イレギュラー投稿> page2012の登壇を終えて【読了目安: 4分】
去る2月7日、「page 2012」というイベントでセミナーのスピーカーとして登壇して来ました。
page2012「事例に学ぶ CG・AR・動画ビジネス」(カンファレンス・グラフィックカテゴリ)
内容は、「写真品質のCGをARシステムに搭載する試み」についてでした。
私が開発に関わっているARシステムの実演と、モデレーター長尾さんとの掛け合いが内容の中心でした。
↓ 会場の雰囲気はこんな感じです。当日ざっと数えた感じでは、受講してくださった方は30〜40人といった感じです。
一番右端の帽子をかぶっているのが私です。
iPad2の画面をプロジェクターにつなげて、ARシステムをリアルタイムで投影しながら話をしました。
↓ マイクを持っている人物がモデレーター長尾健作氏。プロジェクター画面に写るのは、ARマーカーを動かす私です。
伝わるでしょうか?
ARマーカーをiPadのカメラで捉えると、家具のCGが実際の映像に重ねあわせて表示されます。
こちらを実際にデモンストレーションしながら、質疑応答を行ったのが当日の内容でした。
以下、長尾さんからの質問の、主なものと私の返答です。
長尾氏(以下Na) 現在はCGのデータを元として比較的ポリゴン数の多い、品質の高めのやつをやってらっしゃるのですよね。
ARに乗せるコンテンツの画像品質を高くしたいという方向性に向かっているのはどうしてですか?
御園生(以下Mi) クライアントさんの立場に立って考えると、自分のところの商品がよく見えているかというところは非常にこだわられるところだと思います。
現状のARは、CDジャケットにスマートフォンをかざすとタレントさんが出てくるといった、エンターテイメント目的のものが主流だと思うのですが、ゆくゆくは商品をしっかり見せた、販促目的の品質の高いARが徐々に増えていくと考えているためです。
Na 御園生さんはカメラマンさんじゃないですか。それにレタッチャーもやっているし、CGもやっているしということで、マルチクリエイターというお話だったのですが、マルチクリエイターとして取り組んでらっしゃる理由をお聞かせ頂けますか。
Mi グローバル化の中で、知らない間に新興国の方とか、労働賃金の高くない国の方と、いつの間にかネット上で比較されて競争させられているという現実があると思います。
今はTPP論争なんかもありますけれど、国境の垣根が低くなっている中で、お金、物資、技術の国をまたいでの移動が簡単になっていると思います。その中で、カメラマンだってストックフォトで世界中の写真がネット上に並べられたりしている中で価格も比べられていると思います。
自分では直接競争していないつもりでも、例えば「例のプロジェクト、いままで御園生さんに写真撮ってもらってたけど、数万円で済む、このストックフォトでいいじゃないか」なんてことになっているかも知れない。
そういうところで知らず知らずに競争させられちゃっていると思うので、リスクヘッジが必要だという発想がもともとにあります。
そういった状況で何が一番危険かというと、「何か特定の物(フォトグラファーという職業とか)に依存する体質」が一番危険だと思います。
Na 「選択と集中」ではなくて「集中しない」っていうことなんですね(笑)
Mi (笑)そうですね。分散…、リスク分散ですね。
そういう意味で、3本の柱に分散しておいて、どれかがダメになってしまった場合には、その間に他のものを見つけてきて、状態をもとに戻すと。そういうサイクルの繰り返しで自分のキャリアを安定させていくと。それが「マルチクリエイター戦略」の発想です。
Na ARもそうですし、3DCGもそうですけど、写真プロダクションが取り組む例としては、まだまだ珍しい例というふうにも感じます。
Mi そうですね、もともと僕が社内ではフォトショップが得意な方だった流れから始まって、レタッチャーとしての仕事が自然発生的に増えていったりということがあって…、こういう活動をしているのは弊社ではまだ、僕ひとりみたいな状況ではあります。
ただ、これから時代が進んでいって、例えば電子書籍を作りたいってなった場合に、そこにレイアウトするものっていうのは今までの紙の書籍に比べると自由だと思うんです。
そこで写真と、テクニカル説明的なCGとムービーをレイアウトしたいっていう感じに広がっていった場合に、「何をレイアウトしたいって言われても自分一人で作れるよ」っていう状態になるのは至難の業だと思うので、周りのマルチクリエイター的な人と連携関係を少しずつ作っていって、案件ごとにあたっていけるような体勢を構築したいと考えています。
Na コンテンツクリエイションをする人ないし会社であり、中身は問わないということですね。
Mi そこまで行けるといいですね。
Na 今回はARについて、ということで、ARについてもう少しお聞きしたいんですけど、ARに取り組んでいて難しい点とかってありますか。
Mi デバイスの能力の壁、ですね。例えば今はiPadでお見せしているんですけど、同じ事をPCでやろうとするともっといろいろなことが出来ると思います。モバイルデバイスならではのマシンスペックの限界のようなところはあります。特に画質面においては、自分側の準備はできているので、デバイス側の能力のアップに合わせて、ARコンテンツもパワーアップしていくことができると思います。
Na AR自体にどんな可能性を感じていますか。
Mi こういう話の際に、ARとかデバイスとかって言葉を使ってしまうと、非常に難しいものという印象を受けてしまうかと思うんです。
だけど要は
「的(まと)(=マーカー)をスマートフォンで覗けば現実とCGがミックスされて見える」
というだけのことなんで、非常に簡単なものだと、僕自身は思っているんですね。特にユーザーさんにとっては。
だから必ずや広がっていくと思います。
それに、こういった家具を買う行為って清水の舞台から飛び降りる様な行為…って言ったら言い過ぎかもしれませんが、買ってみて失敗するって絶対あると思うんです。意外と部屋に合わなかったとか。
その場合に実際ARで部屋に似合うか見ることができるっていうのは絶対便利だし、存在する必然性があると思います。
Na わかりました。最後に、マルチに仕事をなさっている中で、マルチクリエイターとしての活動と、カメラマンとしての活動のバランスについてはどうお考えですか。
Mi どっちに進んでいくかに関しては、世の中のニーズがあれば、僕はどこにでも出かけて行ってお応えしたいと考えています。
極論すれば、世の中の価値観が完全にひっくり返ってしまって、3つ(写真、レタッチ、3DCG)ともいらないって世の中から言われたら、多分その頃には全く違う3本の柱で活動していると思います。
一部のみのご紹介で申し訳ないのですが、おおむねこういった内容でした。
当日の雰囲気が、少しでも伝わっていたら幸いです。
当日はこの他にサンメッセさん、N-BASEさんのプレゼンと、全員によるディスカッションがありました。
両社とも、意欲的に新分野に取り組んでいらっしゃって、私自身も非常に刺激になりました。
私もより一層、活躍の場を広げるべく精進していきたいと、改めて思った一日でした!
月2回。1日と15日に更新予定。 「グローバルIT時代のフォトグラファー」
(次回は、コンテンツクリエイターが英語を勉強する意味について考察します)