「技術・知識はあっても、自分のやっていることに自身が持てない」という壁 【読了目安: 1分】
当エントリーをご覧いただきありがとうございます。
フォトグラファーの御園生大地です。
最近、ビジュアル制作物系クリエイター以外の人の間でも、Photoshopでのレタッチや、ムービー編集などを普通にできる人が、着実に増えていることを感じます。
そしてそんな中には、こちらも驚くようなスキルをお持ちの方がいらっしゃったりします。
正直、Photoshopの苦手なプロの方より、この方のほうがいろいろ知ってそうだな…なんて思うこともあるくらいです。
でも、そういった「独学で極めた方」の中には、本当は凄いのに、ご自分のスキルに自信を持てないでいらっしゃる方が結構多いような気が最近しています。
「いやあ…私のは自己流なんで」
と言った感じで、一歩引いた感じの自己評価を行っているような気がして…
そんなことない!もったい!と感じることも多かったりします。
どうしてなのか…?
よくよく、そういった方のお話を聞いてみると、
「技術・知識はあるんだけど、自分のやっていることが正しいのかどうかの判断指針がなくて悩んでいる」
というケースが多いようです。
例えば、Photoshopで色の調整を行う機能はひととおり知っている。その知識の引き出しは、普通のプロを凌ぐほどのものであったりする。でも、その機能を使って一枚の画像を調整した時、その結果に自身がない。どう判断して良いのかわからない…
これに対しては特効薬がないし、知識を覚えるのと違って、努力に比例して力が上がっていくとは限らないので、なかなか解決できずにいる方が意外と多いような気がするのです。
プロは、何もわからない新人からスタートしても、まずはアシスタントとして業界内で先輩を見ながら経験を重ねて、次に腕を見込んでオーダーをくださるお客様とのやり取りを続けて…と、周囲の環境にも助けられながら、「ああ、このくらいにすればOKなんだ」という感覚を日々体で覚えていきます。そうして少しずつ自信を積み重ねていきます。
だから、判断指針はしっかりある。自分の仕上げる作品に自信を持っている場合がほとんどです。
反面、自分のスタイルでよく使う機能以外は知らない、というケースも多々あります。いろいろな機能を知らないプロの方は、実力が劣る訳ではなくて、自分に必要のない機能を知らないだけだったりするのです。
プロの現場に接する機会の持つことのできない方に、いかにこういった「判断指針」を確立する手助けをしていくか…
このブログでも何回かお知らせしている「Photoshop色調補正ゼミナール」では、この部分を意識的にお伝えする内容を心掛けて書いております。
写真業界に受け継がれる「不文律」というか、「感覚」みたいなものを、少しでも言語化して読んでくださっている方にお伝えしていきたい…
という訳で、連載では「どうしてこの色に仕上げたのか」の理由に、少しでも言及する機会を作るように意識しています。
色調補正、レタッチには、二つの場面があります。
ある程度狭い範囲の「正解」があって、きちっと正解にしなくてはいけない場面。
極端な話オールオッケーで、思いっきり自分の好き嫌いで決めてしまっていい場面。
この二つの間で、上手くバランスを取っていく必要があります。
基本的には、色調補正というものは「オールオッケー」。自分さえよければ全てありなのが原点です。
でも、ある程度他人の評価を狙うべき場面では、「正解」を狙う必要があります。
評価を得たい相手が誰なのかによって、「正解」の範囲が広くなったり、狭くなったりします。
品質にうるさいお客さんを抱える洋服ブランド向けに印刷物を仕上げるとなると、正解は狭くなると思います。
「褒めて伸ばす」のがモットーの写真の先生に、表面上褒めてもらえればOKだったら、正解の範囲は広くなるでしょう。
他人を論破する気マンマンの先輩写真家が相手だったら、極端な話何をやってもケチをつけられるってことも、なくはないかも…。
このように、世の中には様々なタイプの方がいます。
で、同じ写真でも人によって、褒めてくれたり、評価してくれなかったりということが起こってきます。
厄介なのは、評価の言葉の中に、ポジショントークが混ざってくることがあったりすることです。
(特に初心者の頃はポジショントーク的に厳しい言葉をもらうことも多くなる傾向があるかもしれません。)
そんな中で、自分の中の評価基準を見失いそうになることもあるかもしれませんが、技術執筆の機会などを頂けた際には、少しでも、そこにお手伝いができたらなと考えて取り組んでおります。
月1回。1日に更新予定。 「グローバルIT時代のフォトグラファー」
(次回は、12月1日のam6:00にアップ予定です。)