本当に株式投資は経済成長につながるのか?
家計部門の投信保有額に関する日銀統計が30兆円間違っていたということで問題になっている。家計の投信保有が増えていると思っていただが、逆に減少しているなら、成長資金供給に関する政府の政策が成果を上げていないことになるかららしい。
確かに企業が資金調達を株式市場で行うとすれば、ここに個人の資金も向かえば企業は資金調達がしやすくなって、これをベースに新たな投資などが出来、経済の成長につながるというのは、何となくそんな気がする。だが、個人の資金は別に家に置いてあるわけではない。銀行に預けてあるのだ。そして銀行は、企業への資金供給の機能を有している。だから、このルートが機能すれば、株式を購入する必要は必ずしもない。元々我が国経済はこのような間接金融が中心で、成長してきたのだ。
だが、残念ながら、現在の我が国の銀行は、その重要な機能を果たしていない。だが、だからと言って米国の要請に従って株式市場を強化する政策を打ってきたが、これが機能しているのか?結局海外投資家だけが株価形成に関与し、その自国通貨での評価額が問題となるために、結果としてこれにつれて為替も動くという異常な事態を惹起しただけではないのか?米国においても、貯蓄対策として401Kが導入され、その具体的な運営をする期間が株式市場を主力とするような教育を行ったために、個人の資金が株式に向かったという経緯がある。
では、わが国も同じような施策を推進するのか?我が国は、バブル崩壊まで相応に経済レベルを向上させてきた。だが、その後経済は停滞し、我が国の所得水準は決して高くない。平均での差はさほど大きくないかもしれないが、例えばサンフランシスコで相応のレベルの生活をしている人と、東京の同じレベルを同じような業界で比較すると、恐らく年収レベルは2-3倍になる。もちろん生活費がかかるという問題はあるが、我が国は貧しいのだ。だとすれば、その虎の子の資金を、リスクのある株式に投じろというのはちょっと無理がある気がする。
というか、そもそも現在の株式市場が成長企業に対する資金供給の場として機能しているということ自体が幻想のように感じる。乱高下する市場、アクティビストの存在、一日保有していれば議決権を行使できる制度、などなど、どう見ても鉄火場にしか見えないのは私だけだろうか?貧しい我が国国民にとっては、リスクの少ない銀行に預金をし、その銀行が本来のリスクテイク能力を回復して、産業金融を進める方が良いのではないか?
米国に言われるがまま、会社法や株式市場などを変えてきた我が国だが、そろそろ本当に我が国の国民にとって、更には恐らく世界にとって何が必要なのか、今一度考え直すべき時期に来ているように感じる。