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 セールスジャパンの経営を始め、様々な事業活動に携わるマイク丹治が、日々仕事を通じて感じていることをつづります。国際舞台での活動も多いので、日本の政治・社会・産業の課題などについて、グローバルな視点から、コメントしていきたいと考えています。

世界の構図は大きく変わるか?

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大方の予想を覆して、トランプ氏が米国大統領選に勝利した。しかし、私が何度か指摘していたように、この可能性は否定できなかったことをマスコミも含めてよく理解すべきだ。確かに、経歴や発言からして、彼が大統領に相応しいとは、所謂エリート層は考えなかったわけだし、それは私も同感だ。

だが、考えてみれば、米国のマスコミも日本のそれも、それぞれ既存の枠組みの中で考えるある意味のエリート層であり、現実に有権者がどう考えているかを正確に把握している保証はないのだ。これは、Brexitの時にも示されたではないか?私が、トランプ氏の勝利の可能性を否定しなかったのは、一つにはBrexitの経験だし、もう一つはあれだけ叩かれても、トランプ氏の支持が相応に存在し続けたことが理由だ。

大統領選などでは、一旦勝負がつくと、その差はどんどん開くものだが、今回はそうではなかった。もちろんFBIの不可解な発表なども影響がなかったとは言えないが、これもまたトランプ支持層(実際にはトランプ氏個人に対する支持ではないにしても)の、既存の支配層に対する忌避感を更に強める効果ということであって、本質的なものではない。

要は、これまで虐げられてきた白人の非エリート層、なかんずく米国ベテランなどの軍人層がトランプ支持の大きな母体だったと思われるのだ。さて、トランプ氏の当選で、わが国の株式市場も乱高下したが、そもそも大統領が主要な官僚を指名するポリティカルアポインティー制ではあるものの、米国でも官僚組織は存在していて、実際の行政運営には継続性が求められることを考えれば、そんなに極端な変更が即座に行われるとは考えられない。その意味で、株式市場の乱高下は、過剰反応と言ってもよいだろうし、もっと言えばこのUPSETを奇貨として、うまく市場を操作した人々がいると考えてもよいかもしれない。

ただ、おそらく間違いないのは、一つは沖縄を含めた我が国の駐留米軍に対する支出は、さらに増額の方向で協議がされるだろうということだ。残念ながら、相変わらず米国が命を懸けて我が国を守ってくれるという幻想に取りつかれている我が国の体制からすると、少なくとも当面米軍が不在となることは安全保障の観点からして考えられず、安倍政権の米国寄りの対応も勘案すれば、このような要求には相応に応じざるを得ないだろう。隣の韓国も同じ情勢だが、負担力が低下している上に、現下の朴政権の混乱を考えれば、韓国においては危機的な情勢が起こりうる。

このような世界情勢下で、我が国が世界に対して何を示し、貢献していくかは、益々重要になってきていると考える。昨晩NHKが福島原発の対応を検証していた。ある意味でようやく正常な議論が出てきたという印象を受けたが、番組の仮計算では現状で13兆円を超える対策費が想定され、しかもその大宗が国民負担、という点が主な論点だった。

これも私は以前から主張しているが、賠償は別にして、そもそも廃炉や除染というもののコストが、当初想定を大きく上回っていることが一つの問題だとすれば(そしてそれがさらに賠償額を増やすことにもつながっている)、なぜ初動で現実の事実確認をきちんとしなかったのか、また何故色々なケースを想定して、コスト予測を立てなかったのか、というのが論点となる。

起こったことをとやかく言っても仕方ないが、そもそも今行っていること自体が本当に国民の生命に対するリスク回避の観点や、地域の再生の観点からみて正しいのか、どうも施策自体が、相変わらず対症療法の積み重ねであり、明確な戦略を持たないものに見えてならない。今一度事実を確認しなおすことも必要ではないのか?本当にオリンピックをわが国で開催することが、世界に対して胸を張って宣言できることなのか、考えてみる時期だと思う。

私は、震災直後から1兆円をかけて内部調査のための技術開発をすべきではないかと主張してきた。すでに13兆円かかる見込みなのだとすれば、そして私はおそらくこれが30兆円に膨らむと想定しているのだが、1兆円などごく一部ではないか?事実確認を踏まえて、はじめて原発を引き続き利用するのかという議論が正当にできると考えているし、原発がないと経済に影響などというのは暴論だと思っている。

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