オルタナティブ・ブログ > マイク丹治の「グローバル・アイ」 >

 セールスジャパンの経営を始め、様々な事業活動に携わるマイク丹治が、日々仕事を通じて感じていることをつづります。国際舞台での活動も多いので、日本の政治・社会・産業の課題などについて、グローバルな視点から、コメントしていきたいと考えています。

求められるインテリジェンスー日中関係に思う

»

言語道断の中国の対応

尖閣列島での漁船の衝突問題は、現状とんでもない方向に進みつつある。フジタの職員4名の拘束を憂慮したと思われる日本側の船長解放に対して、中国は謝罪と賠償を要求。ある意味で日本の対応を読み切って、次々と自分に都合のよい状況を作り出していると考えて間違いないと思う。

そもそも尖閣列島は、沖縄返還時に米国から日本に対して返還されたという経緯がある。その後も日本が占有の実態を作り続けることで、日本の領土という点は国際的にも認知されている。しかしその周辺に石油ガスなどの鉱物資源があり、魚場としてもすぐれているのは事実。これに加えて、中近東、東南アジアの資源確保の通路として重要な南シナ海の確保にもつながるということで、中国は様々な形でこれを自らのものにしようと動いてきている。

そんな中、普天間問題で日米の関係がギクシャクしているとの判断に基づき、ここで一つ地歩を固めようと今回の暴挙に出たものと思われる。漁船が二度もぶつかっていて、故意ではないなどということはあり得ないし、おそらく中国政府関係者の指示に基づくものと考えて間違いない。だからこそ船長の早期の釈放を求めたのも明らかだ。

これに対して、日本側が事務的対応を継続した。これに業を煮やして、人命を重んじる日本、経済関係を重視する日本、という認識に基づき、フジタの4名の拘束、更にはレアアースの事実上の禁輸という行動に出たのは明らかである。フジタの職員は、化学兵器遺棄処理のために訪中していたもので、スパイ行為などするはずもないのは明白あd。おそらく殆ど何も理由もなく拘束されたものと推察される。また、レアアースに至っては、国際社会からの批判を避けるために、公式には禁輸を行っていない、など極めて周到な形で実施された。

あまりに稚拙な日本の対応

これに対して、毅然と船長拘留を続け、冷静な対応をしたわが国政府は、確かに評価されるべきものと思う。しかし、結局中国の意図的策略にはまって、船長を開放、加えて謝罪と賠償要求を受けることになった。これは基本的にわが国がこのような事態を正確に分析し、これを踏まえて対応する、という本来国家として保有すべきインテリジェンス機能を欠いているからと言わざるを得ない。

テレビでテリー伊藤氏が鋭い指摘をしていた。仮に日本が船長は開放しても、当該漁船を確保し、第三国に鑑定を委ねれば、自ずから現実に起きたことの正確な再現が出来るという点だ。確かに、このような配慮なくただ船長を拘束したことが、事態を複雑にしたと言わざるを得ない。中国側は、船長さえ早めに取り戻せば、真実は明らかにならない、とすればどうすればよいか?、日本は自国民の安全を重視するから日本人をどこかで犯罪者に仕立て上げて確保すれば良い、という論理で今回の暴挙に出たと思われるのだ。

戦争を回避するためにインテリジェンスを

インテリジェンスとは英国のMI6や米国のCIAのような機能だ。そう言うとすぐにスパイを思い浮かべ、戦争状態を想起するかもしれない。しかし、これらの機関の機能の中心は、情報収集・分析だ。中国の漁船がぶつかってきた背景は何か?船長を逮捕したら、中国側はどう反応するか?衝突に関する事実関係を正確に把握するのにもっとも効果的な手段は何か?などを検討する材料を提供するのだ。これは、単に情報を集めるだけでない。それぞれの過去の行動などからその思考経路や行動様式を推測することから始まる。そしてこれを踏まえて、いくつかのシナリオを作って、それぞれの可能性に対して、国益に最大限に資するように手段を講じる、というのが国家にとって必須の機能だ。

第二次大戦前は、わが国にもそのような機能は相応に存在したと認識している。もっとも過去の大戦での戦勝の記憶が大きく、国力の彼我の差について認識が低かった上に、軍事技術の進展に関して判断ミスがあって、結果として勝ち目のない戦争を遂行してしまったという点では、必ずしも十分な機能ではなかったということかもしれないが。

今、わが国は第二次大戦前に米国との間で存在したと同様に、中国との間で利権の争奪状況にある。ところが、米国との間でそもそも比較にならなかったように、残念ながら既に中国の国力はわが国を超えており、まともに対抗してどうなるものでもない。ましてや、軍事衝突などということは絶対に避けなければならない。

ただ、一方で、中国がジンギスハン以降、常に欧米列強に蹂躙されてきた歴史を思い起こす必要がある。その悔しい歴史は深く刻まれている。加えて中国の日本に対する優越意識や、常に皆殺しで王朝を変遷させてきた歴史、北朝鮮への好意的対応などを考えると、ある意味で中国は世界一危険な覇権国家だと言わざるを得ない。

一方で、経済的に巨大な市場を抱えるこの国を無視するわけにもいかないとすれば、どううまく付き合うか、真剣に戦略と同時に戦術を定めるべきであり、その意味で綿密なインテリジェンスは不可欠なのだ。今回の事態は、残念ながら見事に中国のインテリジェンスに圧倒されたということでしかないだろう。謝罪、賠償はもってのほかだが、船長に対する訴追をあきらめ、4名の開放を求めるとともに、レアアースについては中国との取引を解除し、他国からの調達にする、というような複合的な対応が必要ではないか?

Comment(0)

コメント

コメントを投稿する