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 セールスジャパンの経営を始め、様々な事業活動に携わるマイク丹治が、日々仕事を通じて感じていることをつづります。国際舞台での活動も多いので、日本の政治・社会・産業の課題などについて、グローバルな視点から、コメントしていきたいと考えています。

新成長戦略ーどんな国になるの?

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盛り沢山だけど、、、

前回お約束したように、ちょうど選挙も近いし、政府が新成長戦略を閣議決定したので、今回はこれをちょっと論じてみたいと思います。

とにかく盛り沢山ですね。全部で21項目が挙げられています。ただ、成長戦略なので、重点分野が中心なのでしょうが、例えば高齢化に伴う介護はどうなるのかとか、学校教育はどうなるのかとか、道路網や鉄道など交通体系はどうなるのかとか、エネルギーの供給構造はどうなるのかとか、生活に密着した部分がどうなるのかがとても分かりにくいというのが印象です。

この戦略で、雇用は合計で500万人創出され、需要も120兆円以上増えるということなのですが、では実現した暁には、わが国の産業構造はどうなっているのか、全体の絵が見えない、これが最大の問題のように感じられます。

更に言えば、どうもいろいろなアイデアを並べ立てただけ、個々の戦略はそれぞれよさそうなものもありますが、これらを実現する過程でどんな国にしたいのか、またすべきなのか、そういうグランドデザインがないのが大きな欠陥だと言わざるを得ません。そしてこのことは、民主党政権が始まって以来続いていることでもあります。

国民が保障される生活のレベルは?

先日、外国人で日本に居住している人たちの中で、困窮生活を強いられている人々に対する生活保護のことについて、問題視している議論がありました。要は、外国人ですから、そもそも年金なども払っていないケースがあり、それなのに12万円を超える生活保護費が払われている。一方で、国民年金だけであれば、一人当たりの年金額は、年金保険料を払っていても6万円台だ。これは不公平ではないか、というものでした。

でも、これは外国人と日本人という問題ではなく、そもそも憲法25条の保障する生活レベルの問題です。年金保険料は、払うことが前提とされ、しかも高齢者が増え年金受給期間が長くなれば、そもそも自ら払った保険料だけで実際の保険金がまかなわれるものでもないので、一定の保険料支払いを前提とした国家の生活保障です。ただ、一方でこれとは別に困窮者に対する生活保護があるので、何故一方は保険料の支払いを前提にしており、他方はそうではないのに、保障額が大きいのかというのが問題です。

閑話休題。要は、わが国の制度にはこのように整合性を欠く部分が多々あり、それを放置しながら、時代の変化に従って個々の分野の要求に応えてきた。それが益々不整合の度合いを高めてきたと言わざるを得ません。

その意味で大事なことは、個別の聞こえの良い政策を羅列することではなく、そもそもどんな国になるのか、するのか、ということを示すことだと考える次第です。

環境戦略も健康戦略も必然で、戦略性などないのでは?

例えば、7つの戦略分野の最初に環境・エネルギーが挙げられていますが、そもそも現在の地球環境の状況に鑑みれば、環境分野などは必然的に注力するべきもので、これが現在のわが国の経済・産業の潜在力以上に50兆円の需要を生みだし、140万人の雇用を創出するとは思えません。医療・介護の健康分野も、高齢化の進展で必然的に伸びざるを得ないものであり、50兆円、284万人が、新たに作り出されるという根拠には疑問を感じます。

まして、情報通信技術の利活用を促進するわけですから、これによって効率化が進み本当に雇用の創出につながるのか、疑問が残ります。それでも雇用創出が重要だと位置づけるのであれば、逆に週休3日とかワークシェアリングなどを考える方がより実現性が高いような気がします。

確かに、外国人患者の受け入れなどは、わが国の医療技術の高さに着目すれば意義ある政策かもしれませんが、これはあくまで例えばアジアのお金持ちのためになることであって、どれだけわが国経済の成長に寄与するというのでしょうか?更に言えば、一方で保健医療の財政的な課題に対する解決策も示されていないのに、このような自由診療と保険診療の関係をどうするつもりなのか、保険診療に依存する国民はどうなるのか、こちらの絵が全く見えません。

アジアのインフラ整備を商売にしようという、政商のような戦略が掲げられていますが、それで何年で達成する予定なのか別にして高々12兆円です。途上国の資金的な課題を解決するため、金融的な援助は必要な場合があろうかと思いますが、そもそも受注については、企業が自らの責任で対応すべきなのではないかと考えます。

観光立国は、私も重要だと思いますが、具体的な施策ははっきりしません。もっと大事なのは教育段階における人材の受け入れであり、このためには途上国の生徒が負担できないわが国での高い生活費をカバーする仕組みが不可欠です。しかし、この分野の記載は、大学院クラスの極めて高度な人材に焦点が当たっているように感じられます。世界の人から大事に思っていただくためには、もっと若い世代も含めて多くの若者にわが国で学んでいただけるように、思い切ったことをする必要があるのではないでしょうか?

何故アジアの拠点化なのか?

どうも批判めいた論調になってしまいましたが、もちろん幼保一体化など評価すべきものもあります。ただ、繰り返しになりますが、要は個々の戦略のサイズ感も不統一で、全体を貫く国の方向性が示されていないし、また政策によっては先祖がえりのようなものまである、という点を、もっときちんと練り直していく必要があると考えます。

法人実効税率を下げて外資のアジア拠点にということですが、もちろん税率も大事ですが、そもそも極めて高いわが国の生活費や日本人のコストを考えると、今さら日本にアジアの拠点を置く必然性はないと判断しなければならないのではないでしょうか?物流などを考えても、巨大な消費地であるアジアを念頭に置いた場合、わが国は極東であり、必ずしも最適の場所ではないのです。

まして、総合取引所を作って金融などの中心にというのは、これまでのわが国の金融行政と、わが国特有の法治主義の不徹底に起因する金融分野の専門性の欠如から、どう考えても予見可能な未来においては実現不可能です。

相変わらず、自国の技術を輸出してアジアで儲けよう、日本はアジアの中心、という最早時代遅れの感覚で戦略を議論している気がします。

あまりに多くの項目なので、個々に議論出来ず、オヤジの愚痴のようになってしまいましたが、来週もこの議論を引き継いで、各政党の選挙公約について議論してみたいと思います。

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