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 セールスジャパンの経営を始め、様々な事業活動に携わるマイク丹治が、日々仕事を通じて感じていることをつづります。国際舞台での活動も多いので、日本の政治・社会・産業の課題などについて、グローバルな視点から、コメントしていきたいと考えています。

マイク丹治のグローバルアイ その5

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今週はとにかく大きな変革を予感させる事件が沢山ありました。

まず、イギリスの総選挙。小さな政府を標榜する保守党と政府の関与を重視する労働党との真っ向の対決の様相が、自由民主党の善戦で混乱するかに見えましたが、結局自由民主党は議席を減らす結果となりました。ただ、過半数を取れなかった保守党は単独政権が困難になり、今後どのような連立政権が成立するのか、微妙なところです。そもそもわが国の政治構造はこのところイギリスの体制を一つの模範として目指してきたのであり、そのベースである二大政党の政権交代の流れが崩れるというのは、相応に重大な世界的政治情勢の変化を表していると思われます。それにしても、このような重要な問題が殆ど報道されないところにわが国のマスコミのレベルの低さが表れています。

一方で、米国においても、ティーパーティという新たな保守の流れが政治構造に微妙に影響を与えているように見えます。一部の上院議員が、所属政党を離党して次回無所属で立候補することを表明したりしていて、米国においてもこれまでの政治構造の変革の兆しが見られます。これはわが国でも同じなのだろうと思います。これまでの自民党主導の政治構造が崩壊した中で、これに対する唯一の選択肢として民主党政権が生まれたものの、これは二大政党という図式というより、そもそも大きな対立軸がなくなった中で、国家の指針が示せない中での「自民党ではない」という意味でのネガティブな選択だったのであり、普天間の問題などでその底が見え始めた中で、国民の総意を反映する存在がないので更に混乱をきたすものと考えられます。不幸なのは、前回の衆議院選挙で大変革を起こしてしまったことで、仮に今回の参議院選挙で民主党が過半数を取れなくても、衆議院で解散を打つというのは考えにくいので、これから3年はわが国では政治的に何も進まないということが明確に予測されるところです。

なお、東南アジアでは5月10日にフィリピンで大統領選挙があります。金権政治で批判を受けたアロヨ政権が終焉を迎え、現状ではアキノ元大統領の御子息が当選する可能性が高いと予測されています。ただ、結局相変わらず政治家一家の間で政権がやり取りされている図式は変わらず、政権の周りに巣食うフィクサーたちは残り続けるのではないかと言われています。また、金正日総書記が中国を訪問しました。経済的な支援を得るためだと思われますが、中国が自国の戦略のために、このならず者国家を支援するというのは、わが国としても十分に注視すべきであり、このようなアジア全体の政治的・戦術的な状況を踏まえて、普天間のみならずわが国の防衛やアジア諸国との連携を考えるべきでしょう。

もう一つの大きなニュースは、ギリシャの財政不安に端を発した世界的な株価の急落です。シティの入力ミスで一日でダウが1000ドルの幅で動いたこと、円ドルも7円程度動いたことなど大きな動きがあり、その先行きは不透明です。相互に深く関わり合っているEU諸国の中でも財政構造の弱いスペインやポルトガルは、危機的状況ですし、そうなると一人で支えているドイツがいつまで持ちこたえるかということにもなります。一説にはもうEUは崩壊するという話もあります。わが国は、直接影響を受けるわけではありませんが、世界の株式市場の下落は当然わが国の産業にも影響を与えますし、加えてEUの不調が貿易を通じて影響を与えることも想定されます。

ただ、もっと真剣に考えなくてはならないのは、わが国は国の負債残高では世界最高水準であり、これが国内で消化できてきらからギリシャのような問題になっていないだけだということです。民主党がマニフェストに沿った政策を実現していけば、ますます国債は発行することになりますから、数年後には国内での消化が出来なくなり、そのとたんに日本は世界の金融市場で破綻ということになります。恐ろしいのは、でもこれは国債が発行できない、或いは予算のカットが必要になるということだけであって、たぶん日本の国民は、引き続き十分に豊かですし、米軍がいるので安全ですから、あまり気にしないだろうということです。もちろん公務員の給与カットは起こるでしょうが、元々法外に高いので多少は我慢するだろうと思います。年金も先行き困りますが、たぶん現受給者についてカットすることはしないでしょうし、先行きについてはそもそもあまり期待していないですから、これも大きな問題にはならないでしょう。医療は多少影響を受けますが、これも法外な末期医療などをカットすることで、当面はなんとかなる、ということでこの予測される財政危機も、わが国が本気で変革へと動き出すアクセルにはならない可能性が高いようです。

上海万博が開幕して、結構来園者が増えているようです。その中で注目したいのは、今のところ日本館が一番人気があるということです。つまり、上海地域のちょっとした小金持ちにとって一番関心があるのが日本だということです。ちょうどゴールデンウィークに青森に行っていましたが、奥入瀬で中国語の文字が書かれた観光バスを見て驚きました。香港の会社がマネージしているようですが、たぶん中国人の日本旅行向けに特注されたのでしょう。もちろん地理的に近いということもありますが、中国人にとってきれいで安全で、食事がおいしくて、人が優しい日本は、少なくとも今の段階では憧れであり、日本を体験するために多少高い金も払うということが分かります。

これがいつまで続くのかはわかりませんが、だとすれば少なくともわが国は相応に世界に評価される価値を持っていると考えてよいのではないでしょうか?そして、そうだとすれば、何でも価格競争で安くする、海外へ生産拠点を移して安く作る、というこれまでのやり方ではなくて、逆に本当に良いものを、良いサービスを提供し、その代わりに高い価格を提示するという考え方があっても良いと思います。JALのリストラがうまくいかないようですが、これも何でも価格競争をしようとするからではないでしょうか?欧米に五万円、十万円で行けるということ自体が、身の安全まで考えるとちょっと異常な気がします。高いけれどサービスが良い、座席も広い、ということで他の航空会社の倍の料金を取る、というようなことも考えればどうでしょうか?そもそも一方で五万円のチケットがある一方で、五十万、百万のビジネス、ファーストがありますがビジネスやファーストクラスで、この価格差に見合うサービスが受けられているとは思えません。会社の経費や金持ちに依存した歪んだ料金体系を見直すことも一つの考え方だと思います。

 

Comment(1)

コメント

こんにちは。

イギリスの選挙、もうちょっと注目してもいいと思うのですが、日本ではほとんど報道されませんね……。個人的に、現在の日本は20~30年前のヨーロッパ、特にイギリスと共通点がたくさんあると思っているので、今の日本がどういった未来を目指すのか、という方針を決めるに当たってはもっとイギリスの歴史に学ぶべきではないかと考えています。丹治さんが挙げられていた二大政党制など政治的なトピックもそうですし、少子化が進む社会、若者の低所得化や無職の人の増加、ネオ右翼の台頭(日本だとネット右翼?)、経済成長の停滞化といった社会的なトピックも、1980~90年代のイギリスに似ているような気がしていまして。

『狙った恋の落とし方』(中国原題:「非誠勿擾」)が大ヒットしたおかげで、中国人富裕層の間で北海道観光がブームのようですね。今や、以前から人気がある東京・京都に続く人気だそうで…。日本を訪れる中国人観光客については、先日関係者に取材をしていろいろ材料をもらったのでそのうち記事にする予定です。

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