【IT企业的体育】なぜ彼らはウォーキングに励むのか?
ビジネスや事業としての取り組みではなく、IT企業のスポーツに対する社内的な取り組みを紹介する新コーナー「IT企业的体育」(IT企業のスポーツ)。
記念すべき第1回は、実に全社員の4分の1が万歩計をぶら下げて、日々ウォーキングに励んでいる株式会社ドリーム・アーツを取り上げます。
企業情報ポータルやグループウェアなどを提供する同社は、社内にシステム開発部門を設置しています。その職種の特性なのか、開発担当者の業務は深夜まで及ぶこともしばしばで、体調不良などによって翌朝に出社できない社員が散見されました。ただ、そうしたワークスタイルが習慣化してしまい、たとえ早く帰社しても翌朝時間通りに会社に来られない人もいたようです。
「能力がある社員なのに残念だ。いかに彼らを毎朝出社させられるだろうか」と、同社取締役で製品開発本部長の吉村厚司さんは頭を悩ませました。いろいろと考えた結果、ある結論を導き出しました。
「彼らは眠るのが苦手なのだ。では、早く熟睡できるように疲れさせればいい」
一見強引ともいえるアイデアですが、すぐさま対象となる開発部門の社員数人に万歩計を渡し、退社後のウォーキングを義務付けました。さらにその活動を業務改善の一環として人事評価制度に組み込み、彼らの業務目標に据えました。
ただし、単に上から「歩け!」と言われても、そう簡単に長続きするものではないでしょう。そこで対象となる社員たちを飽きさせないために、吉村さんはウォーキングにゲーム性を取り入れました。
ドリーム・アーツの事業所は、東京・恵比寿にある本社と、広島にある広島ラボの2拠点で、双方をつなぐ道路の走行距離は約829キロです。この道のり分を歩き切ることをミッションとしました。期限は2010年度上半期の人事評価対象となる9月末までです。
こうして2010年5月1日、ウォーキングによる業務改善プロジェクト「歩け歩け隊」がスタートしました。恵比寿の本社を一斉に出発し、ゴールの広島を目指します。期限内に到着するには、1日平均で約7740歩(1歩=70センチと設定)こなす必要がありました。
プロジェクトの管理について、当初は同社のリフレッシュルームに日本地図を広げ、参加者からの歩数申告を基に、吉村さんが該当する場所に毎日手作業で「今、お前はここにいるぞ」というようにピンを置き換えていましたが、その後、せっかくのユニークな取り組みなので社内に広く参加を募集したところ、メンバーが予想以上に増えたためシステム化して管理することが望まれました。
そこで自社で運用する企業情報ポータル「INSUITE Enterprise」に、プロジェクトに関するページを設けました。初期の段階では、参加者の名前と総歩数、歩いた距離などがテキストベースで表になっているだけの簡素なページでしたが、その後、社内の各部署から自発的な改良が加えられました。例えば、Google Mapと連携して現在いる位置を地図上で示したり、ランキング機能をつけたり、あるいは、コメント欄を設けて参加者同士のコミュニケーションやノウハウの共有を図ったりと、段階的にグレードアップしていきました。
「開発部門やマーケティング部門などがそれぞれの強みを生かすことで、どんどんシステムがユーザーにとって使い勝手の良いものに変化しました」(マーケティング部 広報・プロモーショングループの日野早紀子さん)
初期のシステム画面(クリックで詳細画像に)
現在のシステム画面。「イラストを入れるなど親しみわくページに」とデザインを担当した日野さん(クリックで詳細画像に)
現在、プロジェクトの参加者は24人。同社の社員数は100人ですから、実に4分の1が参加していることになります。参加者の歩行ペースはさまざまですが、既にゴールに到達した社員も数人出ています。
「データ入力すればリアルタイムで数字が反映されるので、参加者はランキングの上がり下がりに一喜一憂したり、ほかのメンバーと競い合って歩行ペースを上げたりと、楽しみながら取り組んでいるようです」(吉村さん)
ところで、プロジェクトの立ち上げに際して掲げた「開発担当者が朝出社する」という目標は、きちんと達成されているのでしょうか。吉村さんによると「きちんと朝から会社に出てくるようになった」とのことです。
プロジェクトの今後の発展について、今年度下半期には同社の山本孝昭社長も歩け歩け隊の参加メンバーに加わり、今度はゴール地点を関連会社のある中国・大連にしてはどうかという案も出ているようです。
左から製品開発本部 CT企画推進部の前田高秀さん、吉村さん、POPY、日野さん