休職を繰り返さないために【ケース事例:Aさん】
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こんにちは、リヴァの伊藤です。
なでしこジャパン熱かったですね!
最後まであきらめないことの大切さを改めて教えられました。
前回は、ケース事例としてAさんのことについて書きました。誰にでも起こりえるよくあるケースだと思います。服薬して休息をして症状が安定してきますと、焦りもあって早く仕事に戻りたいと思うのが普通ですからね。お金の問題もあるでしょうし、休職期間のこともあると思います。でも、ここで焦ってしまうと再発というリスクが高くなってしまいます。復帰までのこの時期をどのように過ごすのか、ここがとても重要になってくると思います。
前回のケースで上げた問題点は、以下でした。
①休職中に体力や実戦力が低下していた
②うつになった時と同じ状態(状況)で復帰していた
③周りの支援がなかった
それぞれについての対処方法を考えてみたいと思います。
①休職中に体力や実戦力が低下していた
あくまで主治医の許可をとってでの前提ですが、ジョギングをする、通勤の練習をする、スポーツをするなどで努力すれば体力は回復できると思います。その場合、オーバーワークになっていないか注意する必要があります。思った以上に身体も心も疲れやすい状態になっており、休職前のイメージで運動されるとそれだけで逆に心身共に弱ってしまうかもしれません。また一人でこれを続ける場合、継続するモチベーション維持はなかなか難しい場合も多いと思います。
実戦力ということでは、休職中の方でしたら、人事に協力してもらい課題を出してもらうのも一つの方法です。本人としても会社で要求されるレベルが把握できるでしょうし、会社としても回復具合を確認できます。ただコミュニケーション力など組織の中でトレーニングが必要なもの等は一人では難しい場合もあると思います。
その場合は、一緒に復帰を目指せるようなコミュニティ(※1)に所属できるとよいですよね。休職期間が長くなってしまっている方等は、復帰のモチベーションを維持するのも大変だと思います。コミュニティのもつ力は大きいです。
※1)次項で取上げるリワーク(復職支援)プログラム提供機関等
②うつになった時と同じ状態(状況)で復帰していた
ここがうつ再発予防の一つのポイントと考えております。うつの原因は複雑で一概に言えるものではありませんが、本人に起因するもの、環境に起因するものがあるとして本人に起因するものに対する対策をまずは立てるべきと考えます。
それでは、環境に起因するものはどうするのか。
合わない上司や同僚、ノルマがきつい、残業が多い、ショックな出来事等です。こちらは自分ではコントロールがしづらい要因ですので、今後、別の回でわたくしが考えることをお伝え出来ればと思います。
本人に起因するものの中で対策可能なこととしては、自己理解、認知、ストレスコントロール、コミュニケーション力等があると思います。
では、どこでどのように対策を立てるのか?
自己理解などは一人で出来なくはないと思いますが、集団の中でのほうが、他人と比較することで自己の理解がしやすいですしストレスやコミュニケーション力についても集団の中にいるからこそ気づけることは沢山あります。他のことに関しても集団という力を利用したほうが修得が早いと感じております。
上記のようなことをトレーニングできる機関として、病院系のデイケアや行政管轄の障害者職業センター、民間のEAP会社や弊社のような福祉系の機関等でいわゆるリワークプログラム(復職支援プログラム)を提供しているところがあります。
それぞれに特色がありますので、まずは主治医の先生にご相談されるのがよいと思います。また、ご家庭が原因でという場合もあるかと思います。そういった場合も相談してくれる機関があると思いますので、まずは行政窓口で相談してみるとよいでしょう。
③周りの支援がなかった
家族や会社の理解がないとつらく、再発のリスクを高めます。上記のリワーク機関(復職支援機関)では、復帰後も支援してくれるところもあります。トレーニングで身に付けたスキルが使えているのか、ある上司がどうしても苦手で対応が分からないなど、そんな相談も継続して出来ます。また、お近くの保健所やNPO等でも相談にのってくれるところもあります。上記②にも通じますが、カウンセラーの方に相談することで自分のことを客観的に振り返ることもできますし、相談したい時に出来る相手がいることは重要なことです。同じ境遇にある方同士の横のつながりを構築していくことで、自分だけでなく同じように頑張っている人がいる、何かあった時に相談できるコミュニティがある、というのは、復帰後の定着を目指す人にとって大きな効果があると思います。
また、Aさんのケースでは時短勤務が認められておりました。これは会社としては、社員に配慮をしたいい会社だと思います。しかし、周りの社員がきちんと理解できていなければ、なぜ、Aさんだけ時短で出社できているのかとか、おかげでこちらは仕事量が増えて困るとか、仕事をお願いしづらい等、周りにストレスを与えてしまっている場合もあります。また上司が責任感が強かったりすると、その上司まで巻き込まれる可能性もあります。0.8~1人月として稼働できるくらい、復帰前に戻すことが必要なケースもあるかと思います。
そのために人事のほうでも休職中の活動情報を把握し、主治医や産業医の先生からの情報はもちろんのこと、リワーク機関(復職支援機関)や相談機関としっかりと連携をとり、復帰できる水準なのかどうかを見極めていく必要があると思います。
実際にこのAさん、現在復職に向け復職支援プログラムでトレーニングを積んでおります。前回の休職の時は、日中はやることもあまりなく家で引きこもっているか、たまに公園を散歩する程度だったそうです。また家にいる時は、家族の視線が気になりプレッシャーでもあったようです。今は居場所があること(仲間がいること)、自己理解も進み
自分がどういう時に気持ちが落ち込んでしまうのか、
そうしないようにどのように考えればいいのか、
落ち込んだ時にどうすれば気分が和らぐのか、
自分の特性や強みは他者と比較してどうなのか、
また疑似組織を見立てたゲームでは上司の立場で物事を考えてみたり、
相手とストレスなくコミュニケーションをとる方法を学んだり、
目的がある場合とない場合でのコミュニケーションの違い
など日々復帰に向けて様々なトレーニングしております。そして所属企業の人事の方には、休職中の活動(出勤率等)を月次で経過報告をしております。
プログラム参加当初より、表情やグループワークでの発言、利用後の振り返りのコメントの量、質なども大きくいい方向に変わってます。これは、また失敗するかもしれないと最初は自身がなかったAさんが、コミュニティに所属しながらトレーニングを積むことで、
また再発するのではないだろうか、
↓
復帰できるかもしれない
↓
今度こそ復帰するぞ
という気持ちの変化でもあるように思います。支援する側としてもとてもうれしい変化です。
まとめると、薬や休息からの急な職場復帰は再発するリスクが大きくそれを予防するためにも、リワーク機関(復職支援機関)のような施設を利用し、本人に起因するものの対策をたて、復帰を目指すというコミュニティに所属し、復職後もサポートを受けれることが重要だと考えます。また、人事側でも本人に休職中の活動を任せるだけでなくそういった支援機関の紹介や支援機関と積極的に連携をし、一緒になって復帰を支援していく必要があるのではないでしょうか。
次回は、仕事バリバリ出来ていた人が急に会社にこなくなった。戻ってきたら割と元気で、しばらくするとまた休職した。
こんなケースも実はよくあるのです。
よくあるケースとしてBさんの事例を紹介したいと思います。
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